台湾で流通するスパムメールが先月は79億8,600万件にも上ったことが、国家通信伝播委員会(NCC)が域内インターネットサービスプロバイダ(ISP)主要20社を対象に初めて行った調査で明らかになった。スパムメールを取り締まるための「商業電子メール乱発に対する管理条例」は既に一昨年、立法院に提出されており、NCCは早期成立を促したい考えだ。14日付中国時報などが報じた。
NCCが調査したISPには、ユーザーの多いマイクロソフトのMSN、ヤフーのYahoo!メール、グーグルのGmailは含まれておらず、実際にはスパムメールは月間100億件を超えている可能性がある。この場合、台湾で流通するスパムメールは正常なメール(約20億件)の5倍という計算になる。また、今回得られた79億8,600万件という数値は前月比で3%増加しており、状況はますます悪化しているようだ。スパムメールの95%は海外から送信されている。
スパムメール取り締りのための管理条例は2005年、交通部電信総局によって立法院に提出された。同条例では、スパムメールの被害者が、送信者に対し被害の程度によってメール1件当たり500~2,000台湾元(約1,730~6,920円)の賠償金を、集団提訴によって請求できると規定しているが、現在、審議が棚上げ状態となっている。このため、スパムメールによるパソコン設備の損傷などの被害に対しては、訴訟の根拠となる法律がない状態だ。
沈黙も「拒絶」と解釈
しかし、NCCは、「スパムメールは正常なメールの受信を妨げる迷惑行為で、インターネットリソースの浪費でもある」として、同条例の内容を見直して強化し、来年の成立を目指すとしている。
アイディアの一つとして、「商業電子メールの受信者反応メカニズム」がある。受信者がメールの受け取りを拒否した場合、発信者は再度送信できなくなるのはもちろん、受信者の沈黙も拒絶の意思反応と認定して、「再度の受信を希望しない限り、受信者は再度の広告メール受信を拒否しているとみなすべき」というものだ。
電子メールに対する処罰は憲法で定められた「通信の自由」に抵触するという懸念もあるが、スパムメールは受信者のプライバシー保護など多くの法律問題に関係しており、石世豪NCC副主任委員は、「スパムメールは言論とも言えず、大量発信でもたらされる損害は言論を表現する利益を大きく上回っている。立法による規制は問題ないだろう」という立場だ。
スパムメールの発信者追跡は難しく、ISP業者による情報提供が必須となる。このため、条例草案の見直しに当たっては、集団訴訟の際、ISP業者に発送者のデータ提供を求めることができるようにする。石副主委は、「この部分は発信者個人のプライバシーに関係してくるので、個人情報法の改正によって対応したい」としている。
米国では懲役5年も
世界では、米国、日本、オーストラリアなどがスパムメールを規制している。
米国では今年10月、アリゾナ州の2人の男が、04年にいかがわしい内容のメール送付によって200万米ドルの不当な利益を得ていたとして、詐欺などの罪で懲役5年の有罪判決を受けた。米国でいかがわしいメールの送付者が罰せられたのは、今回が初めてだという。