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《中台サービス貿易協定》中国80・台湾64項目で市場開放、サービス貿易協定に調印


ニュース その他分野 作成日:2013年6月24日_記事番号:T00044367

《中台サービス貿易協定》中国80・台湾64項目で市場開放、サービス貿易協定に調印

 中台は21日、海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)のサービス貿易協定に調印した。中国は台湾に80項目で世界貿易機関(WTO)加盟国に対する条件以上の開放を、台湾は中国に64項目の市場開放を承諾した。経済部は、他国との自由貿易協定(FTA)推進加速につながると評価した。ただ、業者の意見を聞かないまま密室・独断で開放分野の決定を行ったことに与野党から批判が噴出。立法院(国会)で条文ごとに審査すべきとの野党の訴えに与党も賛同しており、年内に発効できるか不透明な状況だ。22日付経済日報などが報じた。


林中森・海基会理事長(前方中央左)と握手する 陳徳銘・海協会会長(前方中央右)。今回ほど「市民の頭越し」批判を受けた握手は初めてだ
(21日=中央社)

 台湾の窓口機関、海峡交流基金会(海基会)の林中森理事長と中国の海峡両岸関係協会(海協会)の陳徳銘会長がそれぞれ就任後初となる第9回トップ会談(林陳会、上海市)でサービス貿易協定に調印し、その内容を発表した。

 台湾側は通信、病院、旅行、運輸、金融などの市場を、中国資本に対し条件付きで開放する。

 旅行業界では、中国資本が台湾で単独出資、合弁などにより営業拠点を設立し、飲食や宿泊サービスを提供できるようになる。旅行会社のある拠点網は3社を上限とする。金融業界では、中国資本の銀行による金融持ち株会社への出資比率の上限を15%に引き上げるほか、中国の適格国内機関投資家(QDII)による台湾証券への投資上限を緩和したり、適格国内個人投資家(QDII2)による台湾投資を前向きに検討する。

サービス従事者、「542万人に影響」

 サービス貿易協定の内容は調印後に初めて明らかになった。民進党立法院党団の柯建銘総召集人は、条文を個別に検討、審査すべきで、包括的な審議はあり得ないと強調。公聴会で市民の意見を募り、審査では厳しく目を光らせると述べた。仮に台湾サービス業界への甚大な悪影響が認められれば政府に見直しを求め、応じなければ審議を拒否すると強い姿勢を示した。

 民進党の管碧玲立法委員は、台湾サービス業界は自営業や小規模な店舗が多いと指摘。かつて台湾の財閥や量販店、チェーン店などに追いやられ、今度は中国資本と競争となれば、倒産・閉店が相次ぐと懸念を示した。

 台北市印刷商業同業公会の徐維宏総幹事は、政府は事前に業者の声を全く聞かなかったと訴えた。健豪印刷事業の張訓嘉総経理は、台湾の印刷業界は中小企業が多く、3割以上がつぶれると言い切った。

 中国資本に対する乗用車レンタカー分野の台湾投資開放に対し、高雄のある業者は価格競争が巻き起こり、もうけを出せなくなると不安をにじませた。台北市小客租賃商業同業公会は、登記700~800社に未登記を加えた1,000社以上、その労働者の家庭1万世帯に打撃を与えると指摘した。

 この他、▽美容・理髪店▽飲食店▽クリーニング▽建築物清掃──など各サービス産業で影響を受ける労働者の人数について、本土派の野党、台湾団結聯盟(台聯)は542万人という独自の数字を発表した。

経済部「次回は情報公開」

 反中感情の強い野党のみならず、与党・国民党の立法委員からも政府の過度の秘密主義に対する批判が噴出し、同協定の内容に賛成を表明した国民党立法委員は21日時点で20人と全議席65人の3分の1を下回った。また、「回答・保留」と「回答拒否」を合わせた数は28人に上った。高雄市選出の黄昭順立法委員は「行政院大陸委員会(陸委会)は、ECFA締結の際は頼幸媛・前主任委員が夜半でも電話をかけてきたのに、今回は立法委員への相談が一切なくひど過ぎる」と批判した。

 秘密主義に徹した理由について卓士昭・経済部政務次長は当初、「交渉であり、こちらが譲歩できる限界を大陸(中国)側に知られないため」と話していたが、批判が殺到するや22日になって「今回は多くの経験を学んだ。次回は一般市民に多くの情報を知らせるべく改善する」と修正した。なお、独断で交渉を進めた背景には、台湾側の開放の度合いはそれほど大きいとは言えず、批判を受けないのではないかとの判断もあったようだ。

【表】