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TSMCがクアルコム受注流出、20ナノ重視の姿勢鮮明


ニュース 電子 作成日:2013年8月12日_記事番号:T00045278

TSMCがクアルコム受注流出、20ナノ重視の姿勢鮮明

 12日付工商時報によると、米クアルコムは、年内に出荷するローエンドスマートフォン用「スナップドラゴン200」シリーズの28ナノメートル製造プロセスチップの発注先を、従来取引関係にあった台湾積体電路製造(TSMC)からサムスン電子に切り替えた。TSMCは受託価格の引き下げ交渉に応じず受注を流出させてしまったが、来年2月に20ナノ製品の量産に入ることを念頭にあえて引き止めを図らなかった形だ。

 28ナノプロセスのスマホチップは聯発科技(メディアテック)、展訊通信(スプレッドトラム)などとの競争が激しいため、クアルコムはTSMCに受託価格の引き下げを求めたもののTSMCは応じず、このため低価格を提示したサムスンに発注を行うことになった。また、一部はグローバル・ファウンドリーズ(GF)にも発注を振り分ける。

 TSMCがクアルコムの要求に応じなかったのは、28ナノは量産開始からまだ2年もたっておらず、クアルコムに値下げを認めた場合、エヌビディア、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、メディアテックなど他の顧客に対しても同様の対応を取らねばならず、収益に一定の悪影響を与えるためだ。 

先行プロセスで独占受注

 また、TSMCにとっては現在、20ナノ量産および16ナノの生産機器設置を来年末に予定通り行うことがより重要になっている。同社は技術的先行の優位性を生かし、他のファウンドリーが65ナノの受注を争っている際に、40ナノの受注を1年半にわたって独占した。現在は同様の28ナノから20ナノへの移行期に当たり、28ナノで多少の受注流出が起きようとも、20ナノにスムーズに移行できれば少なくとも1年は20ナノの受注を独占できるとみている。TSMCは20ナノでアップルの次期ARM系アプリケーションプロセッサーの受注獲得を目指しており、同社の年間の発注規模が35億〜40億米ドルに上ることから、仮に半分を受注できたとしても年間20億米ドルの売上増となる。

新製品で穴埋め

 TSMCは第4四半期に、中部科学工業園区(中科)で28ナノの月産能力が12インチウエハー6万枚規模に達する予定だ。ただ、クアルコムの新規受注を獲得できなかったこと、および一部顧客の在庫調整によって、第4四半期の生産ライン稼働率は8割またはそれ以下に低下するとの見方が出ている。

 ただ、TSMCはLTE対応ベースバンドチップを統合したエヌビディアの次世代テグラ4iのスマートフォンチップや、AMDの「ボルカニック・アイランド」グラフィックチップ、およびメディアテックのオクタコアハイエンドチップなどを同期より生産を開始し、クアルコムの受注流出の穴を埋めるとみられる。
【図】