最近、台東県池上郷の田んぼに囲まれた場所に立つ１本のアカギの木を見ようと、大勢の観光客がこの地を訪れている。特に変わったところのないこの木の人気に火が付いたのは、長栄航空（エバー航空）が６月に公開したＣＭに登場したためだ。

鄭エバー董事長（右１）、黄台東県長（右２）らもお茶を飲みながらＣＭの雰囲気を味わった（27日＝中央社）

　「I SEE YOU」とタイトルが付けられたこのＣＭは、同社のイメージキャラクターを努める人気俳優、金城武がパリや奈良、台東の各地を旅するという内容で、エバー航空が世界最大の航空連合、スターアライアンスに加盟した今年６月18日からテレビ、インターネットなどで中国語版、日本語版、英語版が公開された。

　そのうち台東県の部分では、自転車に乗った金城武が見渡す限り一面に稲穂が実る田んぼに囲まれた小道を走り、道端に立つ木の下に腰を下ろしてお茶を飲みながら休憩する場面が映し出される。

　この街灯や電柱が１本もない素朴な風景が「美しい」と評判を呼び、動画サイト「ユーチューブ」にアップロードされた同ＣＭは、中国語版だけで65万回以上の閲覧数を記録している。

　そしてこの風景を実際に自分の目で見たいとロケ地を訪れる人が増えているという訳だ。黄健庭・台東県長によると、ＣＭの中の金城武と同じように自転車で田んぼの中を走ったり、木の下でお茶を飲みながら物思いにふける人もいるそうで、この道は「金城武大道」、木は「金城武の木」などと呼ばれるようになっている。

　ただ、平日でも100台近い車が周辺に集まるほどの人出となり、中にはたばこの吸い殻やビニール袋などのポイ捨て、さらには空き瓶を周辺の田んぼに投げ捨てる不届き者もいるようで、木の所有者は怒りのあまり切り倒してしまおうとまで考えたそうだ。

　こうした状況を受けてエバー航空の鄭伝義総経理は「ＣＭのせいで住民に迷惑をかけて申し訳ない」と語り、同社が費用を負担し、木の周辺の清掃など環境維持に努めると表明した。なお休日には観光客にお茶を提供するサービスも実施する。