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ナフサプラント中国投資解禁へ、古雷計画に弾み


ニュース 石油・化学 作成日:2013年9月17日_記事番号:T00045968

ナフサプラント中国投資解禁へ、古雷計画に弾み

 行政院は16日、台湾企業による対中投資規制業種のネガティブリストのうち、エチレンなど石油化学製品7品目などの解禁を承認した。早ければ今月末に正式発表される。長年議論が続いてきた中国へのナフサプラント投資がようやく可能となり、中国・福建省古雷半島での台湾石化大手4社によるナフサプラント建設計画が進展を見そうだ。しかし、中国や中東で低コストでのエチレン生産が進められるなど市場環境は厳しさを増しており、開放はあまりにも遅過ぎたとの批判が出ている。17日付工商時報などが報じた。

 行政院が中国での生産解禁を承認した石化7品目は、▽エチレン▽プロピレン▽ブタジエン▽ベンゼン▽トルエン▽キシレン▽エチレン・プロピレン・ブタジエンの混合物──。従来は投資が認められない「禁止類」だったが、今後は経済部への申請、審査を経れば認められる「一般類」となる。投資案件数に制限はない。ただし、▽台湾側が出資比率50%以上で主導権を握る。または特定製品で主導権を握る▽台湾で同時に高付加価値化の投資を行う▽資金を数年に分けて送金し、台湾に債務を残さない▽台湾で人員削減を行わない▽台湾での供給不足割合に応じて優先的に供給する──の5条件が設けられた。

 台湾では2011年4月に台湾中油(CPC)傘下の国光石化科技(KPTC)による大型石化プラント計画が頓挫。15年にはCPC第5ナフサ分解プラント(高雄市楠梓区、通称五軽)の閉鎖も予定されているためエチレンの供給不足が懸念されており、この情況が対中投資開放を後押しした。台湾政府は既に石化製品生産戦略を「海外で量を、台湾で質を」に転換しており、石化業者による海外での量産に制限を設ける必要がなくなった事情もある。

台湾大手4社、中国側と合弁で推進

 現在古雷半島では、▽台湾聚合化学品(USI)▽中国石油化学工業開発(CPDC)▽李長栄化学工業(LCYケミカル)▽和桐化学(HT)──の台湾石化4社が、中国の中国石油化工集団(シノペック)および福建省政府との間で、中国側が製油所を、台湾側がナフサプラントを受け持つ折半出資での一貫石油化学基地の建設が計画されている。初期投資額は45億米ドルで、製油年産1,600万トン、ナフサプラント年産120万トンの見通しだ。

 同計画では、CPDCが撤退の意向を示したとされるが、聯成化学科技(UPC)、国喬石油化学(グランド・パシフィック・ペトロケミカル)、台橡(TSRC)などが参加の意欲を見せているという。

 台塑集団(台湾プラスチックグループ)も今年4月、王文淵総裁が古雷半島に130億米ドルを投資して、垂直統合型の石化プラントを建設する意向を表明した。ただし、石化4社の計画は中国大手および地方政府と合弁する強みがあり、より有利な立場だ。同計画に参加する石化メーカーは、「投資開放後、細部を協議して調整することになる」と推進見通しについて語った。

遅過ぎた解禁

 台湾企業による中国でのナフサプラント建設計画は1989年、当時の中国最高指導者、鄧小平氏直々のお墨付きをもらった台プラ創業者の王永慶氏(08年没)が福建省アモイ市海滄で推進を試みたが、技術や資金の流出懸念などで対中投資推進に慎重な立場だった李登輝総統にストップをかけられ断念した。

 その後、陳水扁政権でも同様の問題で実現せず、馬英九政権が6年目に入った今秋になってようやく実現する運びとなった。ただ、中国石化業界の成長によって既に台湾産業の優位性は薄れている上、中国・中東で低コストのエチレン生産が進み、米国ではシェールガス由来のエチレン生産が17年に1,000万トン以上に達し生産過剰に陥る見通しとなるなど、市場環境は大きく変化した。台湾の開放はあまりにも時期を逸した感が否めない。