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深夜の高鉄にスパイダーマン、正体は補修員


ニュース 社会 作成日:2013年10月11日_記事番号:T00046335

深夜の高鉄にスパイダーマン、正体は補修員

 台湾高速鉄路(高鉄)の最終便が運行を終えた深夜の軌道を鮮やかな黄色に塗られた車両が進む。ある区間に到着すると、その車両からはオレンジ色のコスチュームを身にまとった男たちが姿を現し、電柱によじ登り始める。まるでスパイダーマンのようなこの男たち、実は高鉄の電線を毎日メンテナンスし、1日約13万人の乗客の安全を守る補修員だ。

 電線補修員の仕事は最終便が運行を終えてからスタートし、翌朝5時に第1便が出庫するまでに作業を終えなければならないため、時間との戦いだ。

 通常のメンテナンスの目的は、パンタグラフとの摩擦で電線が切断しないよう、摩耗状態を点検し、必要があれば補修するというもので、毎日、対象区間を変えて満遍なく作業を進める。ベテラン補修員の許瑞書さんによると、高速運行区間に比べ、車両のスピードが落ちる駅周辺区間は電線の摩耗が早いため、頻繁に点検を行う。

 高鉄の生命線ともいえる電線には、運行時2万5,000ボルト(V)の電流が流れており、補修員たちは、対象区間の電力供給停止、絶縁体装備、活線警報器(通電部に近づくとアラームが鳴る機器)の確認をして現場に向かい、再度電流が流れていないこと念入りにチェックした後で作業に入る。

 高鉄の電線補修員は、高い場所での作業が基本となるため、高所恐怖症の人間にはまず務まらない。長さ5メートル、重さ5キログラムのアース棒を片手で持つ必要があるため、強い筋力も必須だ。

 さらにトンネル内では油のにおいや蒸し暑さと戦い、戸外ではヘッドランプに集まってくる大量の虫に悩まされる。軌道上はどこにでもトイレがあるというわけではないという理由もあって、現在補修部門に所属する97人は全て男性だそうだ。

 まさにきつい・汚い・危険の三拍子そろった「3K」といえるこの仕事だが、新人の月給は3万台湾元からと他の職種より特別高いわけではない。しかも深夜勤務とあって補修員のほぼ半数が独身。既婚者も家族との生活を犠牲にせざるを得ないという。

 大変な苦労を伴い、乗客の安全を守る重要な仕事だ。もう少し待遇が良くてもいいのではないだろうか。