ビジネス情報誌の天下雑誌が今年の最新号(第388号)で報じたアンケート調査で、「台湾経済の現状に不満」という回答が昨年比9ポイント増の72.4%に上り、過去5年で最悪となった。これを受けて、「政治指導者がまず解決すべき課題は何か」という質問では、「経済発展の促進」という回答が64%と他の項目を圧倒的に引き離して1位となっており、こうした社会状況がそのまま3月の総統選挙に反映するのか注目される。
台湾経済の課題の一つである貧富の格差について「以前よりひどくなった」という指摘は85%で、このうち「非常に深刻」が58%を占める。また、「現在の生活環境に不満」は54%に上っている。
台湾の将来、4割が悲観
台湾の今後の発展について、「楽観している」は25.3%だった一方、「悲観的」は41.6%で、両者の差は16.3ポイントと過去最悪の開きとなった。2000年5月の民進党政権発足以降の7年半の評価で、台湾が「下降傾向にある」という回答は72.1%で、「上昇傾向にある」の7.9%、「変わらない」の12.6%と大きな差が開いた。民進党の支持者は「上昇」(38%)が、「下降」(25%)を上回っているが、野党支持者では「下降」が9割以上となる。
台湾の当面の最大課題は何か、という質問では、「経済の衰退」が49.1%で最も多く、2位の「政党間の闘争」(47.4%)を上回った。経済問題が政治問題を上回ったのは、この5年で初めてだ。以下、政治の汚職・腐敗(29.0%)、族群(エスニックグループ)の対立(14.8%)と続いた。
馬候補に追い風か
経済・社会の悪化の責任は誰にあるのか、という質問では、約30%が与党民進党、19%が陳水扁総統と回答。すなわち2人に1人が民進党政権に責任があると考えている。
こうした民進党の不人気ぶりは、国民党への再度の政権交代が行われる誘因となる可能性があるが、未来のリーダーがまず解決すべき課題は、「経済発展の促進」(64%)が、次点の「教育の質向上」(約20%)を3倍以上引き離した。若い世代では「経済発展」を挙げた者が7割に上り、経済再生を最大公約とする国民党公認の馬英九候補(前同党主席)にとっては追い風となりそうだ。
「中台関係の改善」という回答も約12%に上り、「条件付き開放」、「できるだけ早期の開放」などを含めた「直航便の開放」を望む声は7割に上った。また、中台関係で最善の状態は「現状維持」という回答が圧倒的多数の63%で、次点の「独立し、中国と平和的な関係を維持する」を合わせると約80%となる。
民進党の票が流失?
「あす総統選挙が行われれば、誰に投票するか」という質問では、馬候補が46.4%と、民進党公認の謝長廷候補(前高雄市長、元行政院長)の12.4%を大きく引き離した。なお、「まだ決めていない」(22.6%)「分からない、回答拒否」(5.3%)は計27.9%で、民進党支持者はアンケート調査でこうした回答をする傾向が強いことから、実際のポイント差はより小さいとみられる。
注目すべきは、前回04年の総統選挙で陳水扁候補に投票した有権者のうち、「今回は馬候補に投票する」が25.0%、「投票に行かない」は10.6%となったことで、民進党は今回計36%の票を失う計算となる。04年に連戦候補(国民党)に投票した有権者のうち、今回謝候補に投票しようという有権者はわずか0.8%だ。
韓国・タイでは「経済」で大勝
先月行われた韓国大統領選挙では、経済再生をアピールした野党ハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)候補が、得票率48.7%で圧勝。タイの総選挙でも、経済建設を進めたタクシン前首相支持派の国民の力党(PPP)が圧勝した。
天下雑誌は、こうした「生活第一、政治はその次」という世界的な傾向が、今回行った調査結果にも現れていると指摘している。
調査は18才以上の男女を対象に、2007年12月19日から23日までの間、電話で行われた。有効サンプル数は1,090件。