台湾の交通史に新たな1ページを開いた台湾高速鉄道(高鉄)が5日、開業1周年を迎える。時速約300キロメートルで台北~高雄を最速90分で結び、台湾の西半分を「1日生活圏」へと変えた高鉄は、台湾人のライフスタイルに大きな変化をもたらした。一方、経営状態は依然赤字が続き、損益均衡までにはまだ半年はかかるようだ。4日付自由時報が報じた。
消費者文教基金会の調査では、利用者の53%が「高鉄のサービスに満足」と回答。一方、「駅への連絡手段に改善が必要」も55%に上った(YSN)
利用法はさまざま
高鉄の開通は人と人、都市と都市の距離を縮めた。ある人気塾講師は、これまで南部では1日に高雄で1コマしか教えられなかったが、途中の嘉義、台南、台中などでも授業が可能になり、「高鉄を都市交通システム(MRT)同じように使っているよ」と笑う。また、高鉄を運営する台湾高速鉄路公司(台湾高鉄)は、開通後より企業会員制度を導入しており、台湾企業は出張の際の高鉄利用がもはや常識となっている。
高鉄は医療習慣にも変化をもたらした。飛行機は天候によって遅延も起きるが、高鉄ではそうしたこともなく、名医が南北各地の診察や講習、会議に飛び回れるようになった。患者の側も、より良い医療を求めて南北を移動する。三軍総医院皮膚科では高鉄開通後、患者が3~5%増えたが、これらはすべて中南部の50~60歳の患者だという。また、北部住民が安い医療費を求めて南部へ治療、検診、整形手術などに出かけるケースも増えた。左営駅近くの高雄栄民総医院では、台北では5万台湾元(約17万円)かかる下あご整形手術が3万5,000元で受けられるという。
犯罪に利用される事例も
都市間の距離が縮まったことで、思わぬ問題も生じている。犯罪での利用だ。台北で先月開かれた「資訊月(インフォマンス)で捕まった窃盗犯は、もともと高雄を拠点とする常習犯だった。朝高鉄に乗って台北にやって来て、夜「戦果」を持って高雄に帰る計画だったという。「1日生活圏」は、「1日犯罪圏」でもあるわけだ。
赤字脱却には増便が必須
開業1年で高鉄の搭乗者は延べ1,500万人を超え、昨年11月までの売上高は120億元近くまで増えた。毎月の売上高は増加が続いているが、依然赤字状態だ。
交通部高速鉄路工程局(高鉄局)関係者によると、高鉄の運営に必要なコストは、利息支出を除いて月間7億~8億元で、損益均衡を実現するには18億元の売り上げが必要になる。これを達成するには少なくともあと半年はかかると予想している。
賈先徳台湾高鉄スポークスマンは、開業1年時点での赤字は想定範囲内で、同社の見積もりでは往復120便を達成して初めて黒字に転じるため、今年はこの目標を達成できると信じて努力すると語った。