中国が今年から労働合同法(労働契約法)などを施行したことにより、投資コストの上昇が見込まれる中、域内企業の66.4%が従来の投資計画を変更しない方針であることが、中華民国全国工業総会が行った「2007年度台商投資状況」の調査で明らかになった。コスト上昇のデメリットはあるものの、高度成長を続ける巨大な消費市場を魅力と考える台湾企業が多いことがうかがえる。8日付工商時報が報じた。
中国では経済成長による人件費の上昇に加え、今年1月1日より、労働者保護をうたう「労働合同法」や、外資系企業の優遇税制の廃止を盛り込んだ「企業所得税法」などが施行され、台湾を含む外資系企業は経営コストの増大が確実視されている。
このためアンケートでは、対中投資で今後1年間に追加投資を計画していると答えた台湾企業が初めて5割を切り、過去最低となった。また、減資を予定している企業も過去最高の3.3%となり、コスト上昇の影響が見てとれる。
しかし、「従来の投資計画を変更しない」という回答は全体の3分の2に当たり、また、投資規模の変更を検討している企業のうち、「増やす」は3割弱で「減らす」の9.4%の3倍に上っていて、引き続き投資意欲は旺盛であることがうかがえる。なお、投資規模については「現状維持」という回答が59.1%で最も多い。
台湾投資はわずか5%
投資計画の変更を検討している企業は、▽中国の他の地方に投資する、15.3%▽他の国に投資する、11.1%▽台湾への投資に転換、5.1%▽投資を止める、1.7%──となっている。
工業総会では、「台湾投資」という回答が少ないのは、▽政治の不安定さ▽純資産の40%を上限とする企業の対中投資規制▽直航便の未開通──などが原因と分析している。直航が実現していないことを原因の一つとして挙げているのは、「全面的な直航が行われた場合、どのような投資行動をとるか」という質問に対し、「中国投資を増やす」と回答は3年連続で減少している一方、「台湾投資を増やす」という回答が増加しているためだ。
人民元上昇、輸出・内需に影響
工業総会はまた、人民元の対米ドル上昇が、域内企業の輸出にマイナスの影響を与えていることも指摘している。
調査によると、「原料調達コストへの影響」は、域内企業の74%が「影響がある」と回答し、「影響がない」はわずか0.4%だった。「影響はあるが大きくはない」は、24.7%だった。「輸出市場への影響」に関しては、75%が「影響がある」、61%は「輸出にも内需にも影響がある」と回答した。
また、域内企業の68%が「人民元高は今後の投資に影響がある」と答えており、8割以上が「今年も人民元は上昇する」という予測を回答した。