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人民元オフショアセンター、江行政院長が推進号令


ニュース 金融 作成日:2014年2月21日_記事番号:T00048772

人民元オフショアセンター、江行政院長が推進号令

 江宜樺行政院長は20日、台湾を人民元オフショアセンターとして発展させる計画に注力すると初めて表明した。金融監督管理委員会(金管会)と中央銀行(中銀)が今後半年間、人民元建て金融商品の多様化と人民元の還流メカニズム策定を推進する。実現すれば、アジアの金融拠点としての台湾の地位が大きく高まることが期待できる。21日付経済日報などが報じた。

 江行政院長は同日、金管会の報告を受けた際、台湾の金融機関の人民元預金残高は1月末に2,100億人民元(約3兆5,000億円)を突破したと指摘。金管会や中銀が規制緩和を続行し、金融機関の両岸(中台)金融業務を発展させると同時に、還流メカニズムを構築することで、台湾は人民元オフショアセンターとして発展し、競争力を付けることができると語った。

2通貨建てETFを検討

 曽銘宗・金管会主任委員は、台湾は中国との貿易、投資が活発で、人民元オフショアセンターに向けて準備を進めるシンガポールやロンドンよりも有利だと強調。今後半年で具体的な対策を数多く打ち出すと述べた。

 金融商品の多様化について、台湾には既に人民元建て預金、ファンド、保険、宝島債(オフショア人民元建て債券)などの金融商品がある。金管会は推進チームを既に立ち上げ、香港、シンガポール、ロンドンの情報収集を行っており、今後は2種類の通貨建て上場投資信託(ETF)や株式を検討する。2通貨建てETFは年内に実現する見通しだ。

台商に資金融通

 還流メカニズム構築に関して曽主任委員は、中台間の貿易を人民元で決済すれば、台湾は貿易黒字なので人民元が得られると説明。オフショア銀行(OBU)を通じて台商(中国で事業展開する台湾系企業)に融資したり、昆山深化両岸産業合作試験区(昆山試験区、中国江蘇省)で、同試験区に本部を設けた台湾企業が台湾から人民元建て融資を受けることを解禁しており、融資資金の流れができると指摘した。香港が深圳の前海深港現代服務業合作区に人民元還流試験区を設置したように、台湾も中国に働き掛け、さらに規模を拡大したいと述べた。消息筋は、江蘇省や広東省など台商が多い地域に広がるとみている。

 また曽主任委員は人民元の還流手段の一つとして、中台のサービス貿易協定が立法院で承認され次第、中国が投資枠1,000億人民元を上限に認める人民元適格外国機関投資家(RQFII)制度を挙げた。これにより台湾の証券会社は中国の有価証券の募集を行うことができるようになる。金管会は今後中国に対し、投資枠上限の引き上げを求める。

 曽主任委員は、彭淮南・中銀総裁が中国との通貨スワップ協定に積極的で、これも実現すれば人民元還流ルートの一つになるとも語った。

シンガポール、ロンドンと協力も

 金管会関係者は、台湾の成功は早急な規制緩和とともに、中台のサービス貿易協定の発効、中国の態度にかかっていると指摘した。現在は香港が圧倒的に強く、台湾、シンガポール、ロンドンは水面下で努力している最中だが、ライバル関係に固執するのでなく、人民元建て金融商品を相互に上場するなど、協力して商機を拡大することも可能だと述べた。

 台湾大学財務金融学系の沈中華教授は、台湾の人民元オフショアセンター化が金融業界にもたらすメリットは大きいが、これまでは掛け声だけだったと指摘。中国の外貨規制緩和が進む前に、台湾は開放を進めなければ、先行メリットが薄れると述べた。

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