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福島原発事故から3年、台湾が教訓探る


ニュース 公益 作成日:2014年3月10日_記事番号:T00049061

福島原発事故から3年、台湾が教訓探る

 東日本大震災から11日で丸3年を迎えるが、第4原子力発電所(新北市貢寮区)の稼働の是非が議論となっている台湾では、原子力行政を担当する行政院原子能委員会(原能会)と原発を運営する台湾電力(TPC)が、この半年間に東京電力福島第一原子力発電所の視察を4回にわたって行い、台湾での原発事故防止に向けて対策を練っている。また、大手紙の聯合報は先月台湾メディアとして初めて福島第一原発に入り、高い放射線量の下で復旧作業がなかなか進まない現状を伝えた。


8日、台湾各地で大規模な反原発デモが行われた。福島第一原発の事故以来、この時期のデモが恒例になっている(8日=中央社)

 10日付同紙によると、王茂臻記者が福島第一原発の対応拠点となっているJビレッジ(福島県双葉郡)を出発した際、放射線測定器は0.22マイクロシーベルト/時を示していたが、汚染水の保管タンクエリア付近では27.41マイクロシーベルト/時に、さらには3号機原子炉付近では500マイクロシーベルト/時の極めて高い値に達した。一般人の年間被ばく許容線量の1ミリシーベルトにわずか2時間で到達する数値で、王記者は「本当に恐ろしかった」と記している。その場では東京電力の職員が直ちに運転手に離脱を命じた。

 取材は厳しく管理され、東京電力側は聯合報に対し、撮影機材が汚染された場合、メモリカードと共に没収すると予告していた。また、東京電力が用意した取材車は、床面もイスも透明なビニールで覆われ、放射線測定器や拡声器も同様だった。原発取材を通じて王記者が浴びた放射線量は200マイクロシーベルトで、依然安全な範囲だったとしている。

汚染水問題で苦闘続く

 王記者は福島第一原発の現状について、「放射能の脅威の下、復旧作業の歩みはのろく、汚染水問題はコントロールできなくなる瀬戸際にある」と伝えた。

 東京電力は現在、1日当たり400トンのペースで増える汚染水対策として、原発の周りを凍土遮水壁で囲い、地下水が原発の敷地内に侵入することを防ぐ計画を進めているが、専門家からは効果に対して疑問の声が上がっている。

 菅沼希一・福島第一原発副所長は、現在の2倍以上となる貯水総量80万トンの新たな保管タンクを建設する計画を立てていると語っており、凍土遮水壁の計画失敗に備える意図がうかがえるという。

対応工事完了は18年

 福島第一原発の原子炉はTPCの第一原発(新北市石門区)と同じ設計で、事故防止への関心は高い。

 昨年、台湾政府高官として初めて福島第一原発を視察した蔡春鴻・原能会主任委員は、福島第一原発の事故は津波で全電源を失ったために起きたことから、台湾でも津波と地震への対策を優先すると語った。

 既に台湾全土の3基の原発で免震重要棟と津波防御壁の建設、および配線の耐震性強化などに取り組んでいるが、すべてが完了するのは2018年になる。このため環境保護団体からはそれまでの原発運転の危険性について指摘する声も上がっている。

 TPCもこのほど呉才基・第一原発所長を福島第一原発への視察に派遣した。TPCは、福島第一原発が震災の際、外部への連絡道路が断たれて孤立し、貴重な時間を無駄にしたことを教訓に、第一原発にヘリポートを新設することを検討している。

核燃料4分の1を回収

 なお、福島第一原発では、4号原子炉建屋の使用済み核燃料プールにあった核燃料1,533体のうち4分の1に当たる418体の回収が終わったところだ。ただ、福島県は2月、18歳以下の子供75人に甲状腺がんおよび疑い例が見つかったと発表しており、今後健康被害の本格的な広がりが懸念される。