ニュース 商業・サービス 作成日:2014年3月21日_記事番号:T00049308
台北市の中山北路二段一帯は、5つ星クラスの集積度が台湾で最も高いエリアの一つだ。1年半前に進出した台北大倉久和大飯店(オークラプレステージ台北)が既に高い評価を確立しており、周辺ホテルのサービス向上に好影響を与えている。
梅原眞次オークラ台北総経理(YSN)
「過去1年半の業績から、成功したと思っている」と、オークラプレステージ台北の梅原眞次総経理は語った。昨年1年間の平均稼働率は81.5%、売上高は宿泊のみで8億8,000万台湾元(約30億円)。売上高は当初予測を15〜20%上回り、稼働率は開業3〜4年での実現を目標としていた水準をクリアした。新規開業で注目されたこと、および客室平均単価を約6,000元と、希望水準よりもやや低めに設定したことで多くの利用者を集めることができたという。
オークラ台北(YSN)
営業数字のみならず、宿泊客の満足度が高いことが梅原総経理をはじめスタッフに自信を持たせている。オークラ台北は今年1月、旅行情報の著名口コミサイト、トリップアドバイサーの台湾高級ホテル部門の1位となった。同サイトには「最高のおもてなし」「台北の新しい極上ホテル」などといった評価が並ぶ。
これはきめ細かいサービスを徹底する方針が実を結んだものだ。オークラ台北では、フロント周辺やベルボーイの人数を、同ランクのホテルより最低でも2〜3割多くしている。宿泊客が到着した際は、ベルボーイが必ず荷物を持って部屋まで同行し、部屋の設備の案内を行う。基本的なことのようだが、高級でも客室数が多いホテルでは、必ずしもこの対応ができていないという。
梅原総経理はホテルオークラのサービスの神髄について「紙一重のサービス」を挙げた。宿泊客を迎えて、受け付けて、部屋まで案内してと、実はホテルのサービスはどこも皆同じだ。だからこそ、宿泊客と目が合えばすぐに「何かご用ですか」と声を掛けることが重要で、ちょっとした気配りの積み重ねがやがては大きな差を生むと語る。
ただ、あくまでホテルオークラ東京と同等のサービスを目指しているため「全体的にまだまだ」との評価だ。台湾人スタッフの日本語レベルと、気配りのレベルを上げる必要があると考えている。これに向けて今年は7月から、台湾人スタッフ5〜6人を東京に研修に送り込む計画だ。
今年は稼働率のさらなる向上と、売上高9億元を目指す。大幅成長はあえて目標にせず、サービス水準のさらなる向上を重視する構えだ。
「ウィンウィンの関係に」
台北老爺大酒店(ホテル・ロイヤル・ニッコー・タイペイ)はオークラ台北がやや高めの価格設定だったため、宿泊客層がすみ分けとなっている。09年に5億元を投じ80日間かけて行った大規模改装が奏功し、「オークラ台北とウィンウィンの関係が築けた」と笹谷久雄総支配人は語る。稼働率はここ1年、90%以上の高率を維持している。改装の際は斬新な客室タイプとインターネット・Wi-FiなどのIT完備をはじめ、全館の配水管の交換や、「外の車の音が聞こえる」との宿泊客の意見が多かったことから、全客室の窓ガラスを最新の防音ダブルガラスに格上げして防音対策を徹底した。
また、レストランのシェフを香港と日本に研修に赴かせるなど、可能な改善にはすべて取り組んだ。改装後もフロントやレストランのスタッフを毎年6〜8人、日本の主要日航チェーンホテルで研修を受けさせるなど従業員教育に力を入れている。
こうしたスタッフの質向上を不断に求める姿勢よって、ロイヤル・ニッコータイペイは経済誌「遠見」が実施したサービス業者評価の国際級ビジネスホテル部門で11年と13年の2回、台湾1位に輝いた。同評価は覆面の調査員が複数回にわたって業者のプロとしての能力やサービスマナー、トラブル解決能力を分析するという、総合力が問われる厳しいものだ。台湾ホテル業界はここ数年、日中関係の緊張やタイの騒乱で観光客が流れてくる恩恵を受けているが、ロイヤル・ニッコー・タイペイがオークラ台北進出の影響を最小化できたのは、「ソフト面はすべて改善に取り組む」という方針のたまものと言えそうだ。宿泊客から寄せられるあらゆる要望・意見を、笹谷総支配人がすべて最終チェックをして改善を図るという努力は今後も続けられる。
対策が奏功
中山商圏で538室の最大客室数を誇る台北晶華大酒店(ザ・リージェント・タイペイ)は昨年、オークラ台北の開業によって日本人が宿泊客全体に占める割合が前年の42%から38%へと4ポイント下落した。しかし当初は10ポイント減を予想していたため、「考えていたほどの影響はなかった」(蔡恵茹・行銷公関部協理)との評価だ。
リージェントはオークラ台北が日本人客にターゲットを絞るとみて、オークラ台北開業の2カ月前に、日本人向けのVIPサービスチームを発足させた。日本人4人、日本のホテルなどで就業経験を持つ台湾人3人の従業員から成り、空港送迎を含めあらゆるサービスに対応する。
リージェント・タイペイの日本人VIPサービススタッフは20〜30代の女性で構成されている
(リージェント提供)
さらに、喫煙を好む日本人客に対応するため、1年ほど前に従来5階だけにあった喫煙ができるベランダのある部屋を6階にも設置し、計60室に拡充した。
リージェントはこうした対応策によって日本人得意客のつなぎ止めに成功、影響を軽減できたと評価している。日本人客が減少した分も、欧米や他のアジア地域、中東からの宿泊客によって補うことができた。
リージェントが今最も注目しているのは目覚ましい経済発展を遂げる中東だ。ムスリム(イスラム教徒)には豚肉やアルコールの摂取禁止などイスラム教にのっとった戒律があり、リージェントは今年2月、食べてもよい食品を保証する「ハラル認証」を取得した。中東とは2月10日にエミレーツ航空が台湾に初の直航便を乗り入れたばかりで、最上級クラスのビジネスパーソンの利用に狙いを絞っている。
(取材/ワイズニュース)
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