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学生が「名誉の撤退」、10日夕方に


ニュース 社会 作成日:2014年4月8日_記事番号:T00049627

学生が「名誉の撤退」、10日夕方に

 中台サービス貿易協定に反対して3週間にわたり立法院を占拠していた学生グループが7日夜、10日午後6時に撤退すると発表した。王金平立法院長が前日、協定に対する監督条例が成立するまでは与野党協議を行わないと約束したことで、「監督条例成立を協定審議に優先させる」との要求に一定の回答が得られたと判断した。ただ、政府は条例立法化と協定審議を同時並行で行い、学生側の要求を拒否する方針だ。一部の学生は徹底抗戦を主張しており、退去に当たっては混乱も予想される。


立法院撤退を発表した学生リーダーの陳為廷氏(前)と林飛帆氏(中央)。前代未聞の立法院占拠事件は24日間で幕を閉じることとなった(7日=中央社)

 学生側は▽中台協定に対する監督条例の立法化▽監督条例成立を中台サービス貿易協定の審議に優先▽公民憲政会議の開催▽中台サービス貿易協定の撤回──の4点の要求を掲げていたが、このうち「監督条例の立法化」のみが政府に受け入れられることとなった。協定撤回と監督条例の優先立法は拒否され、台湾全体としての方向を討議する公民憲政会議は、経済・貿易のみに焦点を絞った「経済貿易国是会議」を6月に開く約束でかわされた。

 政府に要求をすべて受け入れさせることはできなかったが、立法院の長期占拠に批判が高まった中、王立法院長の「約束」を格好の足場として退去を選択した形だ。

 学生リーダーの陳為廷氏は、今後は「中台協定の監督条例」「中台サービス貿易協定の審査」「公民憲政会議の準備」の3テーマを軸に台湾全土で学生運動を組織化する考えを示した。

 学生グループは退去するまでの間、立法院の清掃や壊した器物の修復に務める。退去に反対する学生がいることについて林飛帆氏は8日、「約束したとおりに退去する」と強調した。なお、羅瑩雪法務部長は7日、学生らの違法行為に対し「見て見ぬふりはできない」と発言、法的責任を問う考えを示した。

馬総統、王院長の役割評価

 馬英九総統は7日夜、学生の撤退表明を評価するとともに、王立法院長が学生側にした約束について「サービス貿易協定の条文ごとの審議に反対しておらず、政府の主張と衝突はない」と肯定的な見方を示した。王院長の発言に対しては国民党立法委員から「党への裏切り」との批判も出て、馬総統が厳しい見解を下すとの見方もあったが、学生を撤退へと導いた役割を評価した形だ。実際、王立法院長が約束したのは「監督条例の立法化を与野党協議に優先する」であり「協定審議に優先する」ではないため、国民党に与野党協議を省いて委員会での審議に着手する余地を残している。

 江宜樺行政院長は、学生側が要求する「監督条例優先」は市民の大部分が望んでおらず、政府は監督条例立法化と中台サービス貿易協定の条文ごとの審査を並行して行う立場を堅持すると表明した。

 江行政院長は、協定を理解し支持する市民は沈黙しているが、沈黙は支持者がいないことを意味せず、むしろ多く、それらの市民は政府がやるべきことをやるのを静かに待っていると強調した。

「民間案」は「二国論」

 今後、立法院では監督条例の「政府案」と 民進党立法委員が起草し学生らが支持する「民間案」についての審議が始まる。ただ、「民間案」は名称から「台湾と中国の協定締結処理条例」で、国同士で協定を結ぶという前提に立っていることから、王郁琦・行政院大陸委員会(陸委会)主任委員は、「現在の両岸(中台)関係は、両岸が共に『一つの中国』に属するとした『1992年の共通認識』を基礎にしており、『民間案』は法理上も実務上も困難で両岸関係が空前の危機に陥る」と強く批判した。

「台湾経済は崩壊へ」

 また、国民党は来週にもサービス貿易協定の委員会審議を始めたい考えだが、民進党は「監督条例立法化が優先」として徹底的に審議拒否に打って出る構えだ。

 これに対し張家祝経済部長は7日、「引き伸ばし戦術に遭って協定発効が遅れれば、台湾は早ければ3年で苦い果実を味わう。再来年より環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が相次いで発効する中、時間はわれわれの側にない。台湾経済はあっという間に崩壊する」とこれまでにない強い表現で懸念を示した。 



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