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第4原発の建設凍結、反対世論に譲歩


ニュース 公益 作成日:2014年4月28日_記事番号:T00050017

第4原発の建設凍結、反対世論に譲歩

 台湾電力(TPC)の第4原子力発電所(新北市貢寮区)の建設に反対する市民団体ら5万人(主催者発表)が26日から総統府周辺で大規模な抗議活動を展開したことを受けて、馬英九総統は27日、第4原発1、2号機の建設凍結を宣言した。先週、工事そのものは続行して、完成してから稼働の是非を問う住民投票を実施する方針を示したばかりだったが、反対世論の沈静化を狙い工事停止へと譲歩した。今後、焦点は住民投票の実施条件に移る。28日付工商時報などが報じた。


江行政院長(右)は28日、あくまで第4原発の建設凍結であり、中止ではないと再度強調した(28日=中央社)

 馬総統は同日、江宜樺行政院長、毛治国行政院副院長の他、郝龍斌台北市長、朱立倫新北市長など与党国民党の県市長ら計15人を招集して会議を開催。▽第4原発について建設作業を即時凍結し、1号機は現段階での安全検査を行った上で封鎖する▽全国エネルギー会議を早期に開催し、将来にわたるエネルギー確保について検討する──ことを決議した。杜紫軍経済部次長は第4原発について、発電は行わないものの設備は維持し、必要性が浮上した場合に住民投票で民意を問うと説明した。なお、工事は1号機が96%、2号機は91%が終了している。

「凍結」と「中止」の間

 国民党内部では、現状で最大限の譲歩を行ったとの見方が強い。一方、「建設中止」と「建設凍結」は意味が異なるとの指摘も挙がっている。「建設中止」は永久的な建設中止を意味するが、「建設凍結」は必要があれば作業再開が可能で、民進党の蘇主席は今回の決定は曖昧だと批判した。また、第4原発の存続は重要な政策であり、政策変更は法に基づいて行うべきで、江行政院長に対し自ら立法院で報告して同意を得るべきだと主張した。

 蘇主席はさらに、住民投票で第4原発の建設中止を問う場合、現行法では「全有権者の50%以上の投票」と「有効投票のうち半数以上の同意」の2点が成立の要件となっており、条件が厳しいことから「全住民の25%以上が同意」への変更案を立法院に提出していると説明した。25%以上は約500万票に当たる。住民投票については朱新北市長も27日の会議で、民進党案は支持しないが、住民投票の成立要件については検討の余地があり、与野党で協議すべきだと意見を述べ、多数の県市長らも支持したもようだ。

電気料金上昇、住民負担増加に

 中華民国全国工業総会(工総、CNFI)の蔡練生秘書長は国民党の決定に対し、企業は▽エネルギー確保の安定性▽電気料金の値上げ──を懸念していると説明。既存の第1~3原発の稼働延長は避けられないが、火力発電所も間もなく稼働年限を迎え、電力供給はひっ迫するとの見方を示した。経済部は仮に第1~4全ての原発が稼働しないとなると、電気料金は4割上昇すると試算。一般家庭であれば、年間4,990台湾元(約1万7,000円)増加する計算だ。ただ、企業の電気料金コスト増加は販売価格への転嫁につながり、物価上昇負担が住民にのしかかることになる。

忠孝西路を占拠、45万人に影響

 原発建設中止を訴えた抗議デモには、126の市民団体や蘇主席、蔡英文・元民進党主席の他、中台サービス貿易協定に反対した学生運動グループのリーダー、林飛帆氏、陳為廷氏らも参加。総統府前の凱達格蘭(ケタガラン)大道に終結した。周辺道路は封鎖され、27日には台北駅前の忠孝西路にも抗議者がなだれ込んだため、バス77路線、45万人の足に影響が出た。抗議者の占拠は28日早朝まで続いたが午前7時ごろまでに交通は回復した。 


抗議者たちは夕立が降る中でも座り込みを続けた(26日=中央社)