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第4原発凍結、電子産業に打撃必至


ニュース 公益 作成日:2014年4月29日_記事番号:T00050044

第4原発凍結、電子産業に打撃必至

 馬英九総統が台湾電力(TPC)第4原子力発電所(新北市貢寮区)の建設凍結を宣言したことを受けて、早ければ2018年に電力不足となる見通しで、経済部は▽既存原発の稼働延長▽民間発電所からの電力買い取り▽天然ガス火力発電所の増設──など代替エネルギー対策を検討している。ファウンドリー世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は28日、増産計画は電力の安定供給にかかっていると強調。効果的な対策を打たなければ、世界の電子産業にも影響波及は避けられない。29日付経済日報などが報じた。


張経済部長(左)。経済部は、エネルギー使用量が多い鉄鋼、石油化学、セメント、自動車産業が真っ先に打撃を受けるとみている(28日=中央社)

 江宜樺行政院長は同日、8月末から9月初めに各界を招いて全国能源(エネルギー)会議を開催し、代替エネルギー開発や省エネ、温室効果ガス排出量削減などについて話し合うと述べた。

原発以外、コストと時間に課題

 経済部関係者は、第1原発(新北市石門区)、第2原発(新北市万里区)の稼働継続しか手段はないと話した。第1原発は18~19年に、第2原発1号機は21年、2号機は23年に、第3原発(屏東県恒春鎮)は24~25年に稼働停止予定で、発電量は合計400億キロワット時(kWh)に上る。

 原発以外で考えられるのは、民間の発電所からの電力買い取りだ。ただ、TPCによると今年3月までの買い取りコストは1kWh当たり3.09台湾元(約10円)で、平均電力料金2.88元よりも高い。

 TPCは桃園県大潭で、天然ガスを燃料とする火力発電所3基を計画しており、発電量が年間108億kWh増える予定だ。しかし、天然ガス火力発電所の電力料金は同3.94元。しかも、建設には環境影響評価(環境アセスメント)の審査通過が必要で、完成までに8~10年かかるため、第4原発1号機、2号機が稼働予定だった15年、17年に間に合わない。

 石油火力発電所の電力料金は同7.25元とさらに高く、石炭を燃料とした場合は同1.35元に抑えられるが、温室効果ガス排出量が増える。太陽光発電の同6.76~9.46元に比べ、陸上風力発電ならば同2.64元で済むが、いずれの再生可能エネルギーも安定供給が確実でない。



産業用に優先供給=経済部長

 台湾の年間電力使用量は2,000億kWhで、産業用が53%を占める。第4原発が稼働しなければ、台湾の年間電力使用量の5%に当たる193億kWhが不足する見通しだ。張経済部長は、早ければ4年後に地区ごとの電力使用制限を導入しなければならず、その際には産業用電力を優先供給し、家庭用はその次となると話した。

「冬の時代到来」=SPIL

 TSMCは、ファウンドリーにとって電力の安定供給は絶対条件で、もし電力料金が上昇しても受け入れると表明した。TSMCはアップル、クアルコム、聯発科技(メディアテック)などを顧客とする。業界関係者は、電力不足となった場合、TSMCだけでなく、世界の電子産業のサプライチェーンにまで大きな影響を及ぼすと予想している。

 半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)大手、矽品精密工業(SPIL)の林文伯董事長は、第4原発廃止は電力料金上昇に直結するため「越冬の準備が必要だ」と話し、産業界にとって厳しい時代が到来するとの認識を示した。

 中国鋼鉄(CSC)の鄒若斉董事長は、もし長期的に電力供給が不安定となれば、生存問題に関わると指摘。鉄鋼業界の発展を考えるなら、第4原発を稼働させ、第1~3原発も廃止を延期して工業に必要な電力を十分供給してほしいと述べた。鉄鋼業界は脱原発で年間コストが最大155億元増えると試算している。

【表】