ニュース 公益 作成日:2014年4月30日_記事番号:T00050073
台湾電力(TPC)第4原子力発電所(新北市貢寮区)の建設凍結を受けて、電力料金が10%上昇するごとに企業の利益が平均3%減少するとの試算が瑞信証券(クレディ・スイス証券)から示された。台湾が脱原発を選択した場合、2025年に電力料金が40%上昇するとされる。経済成長と環境への目配りが求められる中、馬英九総統は29日「日本を参考にする」と発言。日本の安倍政権は原発再稼働を目指しており、台湾も原発推進のスタンスに変化はないことを示した形だ。30日付経済日報などが報じた。
馬総統(右)は、台湾と日本は共に島国で条件が似ていると指摘した(29日=中央社)
馬総統の発言は訪台した著名コンサルタント、大前研一氏に対して行われた。大前氏は、スイスやイタリア、ドイツ、スウェーデンなど欧州諸国は以前、国民投票などで脱原発を決定したが、現在はエネルギー政策の見直しを迫られ、原発再稼働計画まであると指摘。台湾の第4原発を視察したところ、建物やエンジニアの水準が非常に優れており、信頼に値すると述べた。
大前氏は、台湾政府はまず▽脱原発による電力料金の見直し▽再生エネルギーのメリット・デメリット▽代替エネルギーの輸入▽温室効果ガス排出量──などエネルギー政策をしっかり説明すべきで、現段階で住民投票によって原発問題を決定するのは間違いだと指摘した。
馬総統は、日本は天然ガス輸入コストや電力料金上昇、貿易赤字拡大などの要因から原発回帰にかじを切ったと指摘。18年で稼働40年を迎える第1原発(新北市石門区)は廃止を検討しなければならず、日本の経験を施政の参考にすると語り、第4原発稼働の必要性を匂わせた。
TPCは、第4原発建設許可の3回目の延長を行政院原子能委員会(原能会)に申請したと明かした。建設許可は今年12月15日が期限となっており、経済部とTPCは5年延長で、建設続行の可能性を残す構えだ。
製造業の生存困難に=工総
瑞信証券の許忠維・台湾株式戦略アナリストは、仮に台湾の電力料金が10%上昇すれば、小売り、鉄鋼など従来型産業への影響が大きいと予測。業種別の打撃利益減少幅予想は、▽鉄鋼・自動化産業、4~5%▽プリント基板(PCB)、3~4%▽液晶パネル・後工程モジュール(LCM)、2~3%▽半導体・電子部品・石油化学、1~2%▽IC設計・パソコン・金融など、1%未満──。
中華民国全国工業総会(工総、CNFI)の許勝雄理事長は、製造業が現在台湾GDP(域内総生産)の28%を占めるが、電力料金上昇でコストが増えれば製造業は生存困難となり、今後はサービス業しかやっていけなくなると懸念を表明した。
これに対し鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は、影響はそれほど深刻でないと述べた。そもそも台湾の電力料金は安過ぎる上、24時間営業のサービス業の方が工業よりも電力料金単価が低いのはおかしいと指摘した。
抗議活動続く、10万人に影響
台湾智庫(台湾シンクタンク)の世論調査によると、もしあすが住民投票だった場合、「第4原発の建設停止、稼働不可」への賛成は65.6%だった。公民投票法の住民投票の成立要件撤廃への支持は64.8%だった。
原発に反対する市民は29日午後、立法院を包囲して立法委員に対し、建設中止に向けてさらなる協議を行うよう訴えた後、午後6時には台北市の忠孝東路と林森南路の交差点に500人以上が集結し、路上を40分間占拠した。帰宅ラッシュの時間帯で交通が大混乱し、台北市の統計では10万人の足に影響が出た。
路線バスは迂回(うかい)を迫られ、渋滞に巻き込まれたバイク運転手は「場所を変えてやってくれ」と不満を訴えた(29日=中央社)
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