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ベトナム反中デモ、台湾企業も被害


ニュース その他分野 作成日:2014年5月14日_記事番号:T00050329

ベトナム反中デモ、台湾企業も被害

 南シナ海の領有権をめぐり中国との緊張が続くベトナムで13日午後、反中デモ隊が一部暴徒化して工業団地で破壊活動を行い、中国企業だけでなく、漢字の看板を掲げる台湾企業も攻撃対象となった。生産停止やホテルへの避難を迫られている状況で、経済部はまだ被害の全体像を把握できていない。中国の投資環境が悪化する中、台商(海外で事業展開する台湾系企業)にとって有望な投資先とみられていたベトナムのリスクが露見した。14日付聯合報などが報じた。


暴徒は門を押し倒してオフィスに侵入し、設備を破壊したり、書類を燃やしたりした(13日=中央社)

 ベトナムでは11日、首都ハノイの中国大使館前で大規模デモが行われ、13日は外資が投資する南部一帯の工業団地で抗議活動が広がり、ホーチミン市周辺のビンズオン省やドンナイ省の台商で被害が伝えられた。

 ベトナム台商総会の劉美徳会長は、ビンズオン省では被害を受けた台商は500社に上ったと説明。同省のベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)では13日午前、操業停止を求める数十人が抗議活動を行っていたが、午後には4,000~5,000人にふくらみ、次々と暴徒化し制御不能になったと話した。ビンズオン省の台商協会の蔡菀真会長はベトナム政府は中国に民意を示すため3日間は暴動を黙認するといううわさが広がっており、工場停止が長引けば損害も拡大すると懸念を示した。

日韓欧米にも無差別攻撃

 化学繊維大手、遠東新世紀(旧遠東紡織、ファーイースタン・ニューセンチュリー)は13日午後、ビンズオン工場が攻撃を受け、生産を停止した。製靴最大手、宝成工業(PCG)傘下の裕元工業も現地警察の助言で1万人以上が働くビンチャイン工場を停止した。

 ある欧米ブランドスポーツ用品の受託生産大手企業は、ビンチャイン県の工業団地の工場にまずベトナムの国旗を手にしたベトナム人がバイクで乗り入れ、続いて看板が壊され、次には物品を持ち去られ、1日3度も攻撃を受けたと明かした。

 ある台商によると、当初は中国語の看板から狙いを付けられたが、そのうち日本や韓国、欧米企業も無差別に攻撃されたという。

 暴動はドンナイ省にも広がり、現地に進出する台塑集団(台湾プラスチックグループ)傘下の台湾興業では、13日深夜に暴徒300人がバイクで工場に進入、パソコンやモニターなどを持ち去った。この際、台湾人幹部1人がけがをしたという。劉ベトナム台商総会会長は、今後ホーチミン市などにも波及する可能性を懸念している。

渡航警告引き上げ、企業撤退も示唆

 黄志鵬駐ベトナム代表は、ベトナム政府が適切な対応を取らなければ、企業の引き上げもあり得ると話した。

 林永楽外交部長は14日午前に記者会見を開き、中華民国台湾は中国大陸の一部分ではないと強調、ベトナム政府に対し早急に秩序を取り戻し、台商の安全を確保するよう要望した。また、台商が帰台する便を確保するため中華航空(チャイナエアライン)、長栄航空(エバー航空)と協議中であることも明らかにした。

 外交部は13日夜、ビンズオン省の渡航情報を「黄色(渡航の是非を検討)」に引き上げている。

ベトナム投資、台湾は世界4位

 ベトナムは東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要国で、近年開放を進め、外資の投資を呼び込んでいる。台湾の昨年のベトナム投資は66件4億1,500万米ドルと、09年の16件2億4,200万米ドルから大きく増えた。14年2月までの累計は2,294件280億米ドルと、日本、韓国、シンガポールに次いで多い。昨年の対ベトナム輸出額は89億200万米ドル、輸入額は26億2,200万米ドルだった。

 台商は中国の人件費上昇などを受け、東南アジア投資を拡大している。今回台湾企業は中越摩擦のとばっちりを受けた形で、東南アジアに行っても「チャイナリスク」に見舞われることとなった。