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ベトナムの紡織・製靴、コスト増大に懸念


ニュース その他分野 作成日:2014年5月16日_記事番号:T00050383

ベトナムの紡織・製靴、コスト増大に懸念

 南シナ海の領有権をめぐるベトナムの対中抗議活動の騒乱を受け、外資系証券会社は労働集約型の紡織、製靴産業への打撃が最も大きいと指摘した。台湾メーカーは両分野で、ベトナムでの生産比率は30~55%に上るが、中越摩擦の投資リスクが浮き彫りになったことで、新たな投資先を求める動きが加速するとみられる。製靴最大手、宝成工業(PCG)はバングラデシュ、カンボジアなどでのサプライチェーン構築を計画している。16日付蘋果日報などが報じた。


ベトナム外務省は15日、台湾企業を含め外資の安全と財産を全力で守るため必要な措置を取ると表明した。中国の海洋覇権主義に対する国を挙げての不満表明は、台湾企業に最大の被害をもたらした(15日=中央社)

 メリルリンチ証券は、▽紡織▽製靴▽化学工業▽ゴム──の各産業が特に打撃を受けるが、金融やハイテク関連の影響は限定的と指摘した。モルガン・スタンレー証券は、儒鴻企業(エクラット・テキスタイル)は衣料品のベトナム生産比率が40~45%、紡織は54%に上り、聚陽実業(マカロット・インダストリアル)は全体で30%以上、製靴のPCG、豊泰企業は30~50%と指摘した。従来型産業はベトナムで生産することで、ASEAN自由貿易協定(AFTA)によって東南アジア各国への輸出で関税を低く抑えられ、中国の同業との競争を有利に運んでいた。ベトナムは環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に参加しており、さらなる優位性向上への期待感もある。

 PCGは、世界に従業員42万人を抱え、賃金と原材料コストが上昇し続ける中、人件費がより安い生産拠点を模索していると表明した。中国・広東省東莞市の工場では、基本給が2003年の450人民元から今や1,310人民元(約2万1,000円)まで上昇した。一方、豊泰企業は今後はベトナムやインドネシア、インドを中心に工場を拡張するとしている。

損害100億元以上か

 経済部は15日午後、ベトナム南部の暴動は大方収まったと発表した。台湾企業の被害状況は、損害を受けたのが100社以上(うち11社に放火)で、安全上の懸念から稼働を停止した企業は数百社に上る。業種別では製靴15社、自転車・バイクおよび部品14社、紡織・アパレル10社、家具7社、包装・印刷3社など。

 損害額について経済部は、台湾企業と損害保険会社の報告があるまで不明としている。市場では100億台湾元(約340億円)に上ると推測されている。

 ベトナムのグエン・タン・ズン首相は15日、治安維持体制の強化とともに、外資を含め全ての企業が通常通り営業できるよう関係当局に対応を指示した。

台プラなど、徐々に稼働再開

 14日に中国人労働者とベトナム人労働者同士の大規模な衝突があったと報じられた台塑集団(台湾プラスチックグループ)の幹部は15日、中国人1人が熱中症で死亡し、90人がけがをしたと話した。

 台プラグループは中部ハティン省の大型製鉄所の設備に深刻な打撃はなく、2015年の火入れ計画に変更はないとしているが、業界関係者は遅延の懸念があると指摘した。一方、ロンアン省の工場は被害が軽微で15日午後に復旧した。ドンナイ省ニョンチャック工場は早ければ16日に稼働を再開する見通しだ。

 中国鋼鉄(CSC)と新日鉄住金などのベトナム合弁、CSVC(中国語名・中鋼住金越南)やタイヤ大手の建大工業も16日に再開する予定だ。同業の正新橡膠工業(CST)は、工業団地は落ち着きを取り戻したが、週末18日に大規模デモが行われる可能性があり、再開は未定だとしている。