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台プラのベトナム製鉄所、稼働延期確実に


ニュース 鉄鋼・金属 作成日:2014年5月20日_記事番号:T00050438

台プラのベトナム製鉄所、稼働延期確実に

 台塑集団(台湾プラスチックグループ)がベトナム・ハティン省で建設中の大型製鉄所の林信義董事長は19日、南シナ海の領有権をめぐる中越摩擦を受けて、同製鉄所内で先週発生した下請け業者のベトナム人、中国人の衝突事件の影響で、来年5月に予定していた第1高炉の稼働が1~2カ月遅れるとの見通しを示した。ただ、撤退は考えていないと強調した。設備への被害総額は暫定値で300万米ドルに上り、今後ベトナム政府に賠償と減税措置などを要求する方針だ。20日付工商時報などが報じた。


林董事長はベトナムとテレビ会議を行い最新の状況を把握し、記者会見で説明した(19日=中央社)

 同製鉄所では中国人従業員4人が死亡し、150~160人が負傷。事務所のクーラー、パソコンなどが破壊され、設備の被害額は170万米ドルに上る。下請け業者の被害はさらに深刻で、コンテナ内の全ての工作機械、電線、ケーブルなどが略奪され、新たに買いそろえるには時間がかかるという。

 事態は既に安定を取り戻し、日本、ベトナム、韓国などの建設業者は工事を再開しているが、被害が最大だった中国の下請け業者、中国冶金科工集団(中冶、MCC)は、熟練工などを含む中国人従業員3,000人余りを一時帰国させることを決定。これにより、被害を受けた高炉などの重要行程に遅れが生じることから、稼働延期が確定した。林董事長は、同製鉄所は第1期の投資額だけで100億米ドルを上回るベトナム史上最大の投資案件で、ベトナム政府が重視するのはもちろん、台湾や他の国・地域からも注目を集めており、中冶が契約を中止することはないと信じていると語った。

鉄鋼生産過剰、延期に肯定視も

 台プラは同製鉄所に既に60億米ドルを投入している。なお、2016年5月の稼働を予定している第2高炉への影響はないとみている。現在鉄鋼は世界的に生産過剰にあるため、今回の稼働延期について台湾域内の業界関係者は、決して悪いことではないと指摘している。

 ハティン省人民委員会のダン・クオック・カイン副委員長は、今回の騒動を謝罪し、1,000人以上の警察官を派遣し、安全確保に力を尽くすと強調している。

 ただ、林董事長は近くベトナムを訪れ、副総理クラス以上の官僚と面会し、投資の安全保障、従業員の安全保障並びに、賠償請求、減税などの優待措置を強く求める考えだ。沈栄津経済部次長(次官)も21日、訪問団を率い被害を受けた各地の工場を視察した上で、ベトナム政府に台湾企業の工場稼働停止による損失などへの賠償を求める予定だ。

被害224社に

 経済部の最新統計によると、台湾企業の被害状況は、ビンズオン省の175社を含む224社の工場でベトナム人による侵入、破壊行為が確認された。そのうち5社の工場は放火により全焼し復旧できない状態だという。ただ、タイビン省、ハイフォン市、ビンフック省などでは工場の生産を再開。17日から安全を考慮し従業員に休暇を与えた鴻海精密工業もきょう20日から通常通りの出勤を再開する。

 一方、杜紫軍経済部次長は同日、93年に調印したベトナムとの2国間投資協定(BIA)について、ベトナム側と見直し交渉に入っているものの、今回の騒動への補償が新協定に基づいて行われるはまだ分からないとの見方を示した。 

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