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中国人の「ニセ自由旅行」、横行を問題視


ニュース 商業・サービス 作成日:2014年6月11日_記事番号:T00050869

中国人の「ニセ自由旅行」、横行を問題視

 中国人の台湾旅行ブームで、交通部が定める中国人観光ツアーの1日当たりの受け入れ上限の満杯状態が続く中、業者が中国人観光客を自由旅行の名目で台湾に入境させた後、集合させて団体ツアーとして観光に繰り出す「ニセ自由旅行」が横行していることが交通部観光局の調査で明らかとなった。今年既に16組が見つかっており、受け入れ上限をなし崩しにするものとして問題視している。11日付聯合報などが報じた。


今年1~4月の訪台旅行者数は延べ319万人で、そのうち4割を中国人が占めた(観光局リリースより)

 現在中国人観光ツアーの上限は1日当たり5,000人で、自由旅行は同4,000人だ。自由旅行は開放都市を設けており、1日当たりの申請人数は3,000人ほどにすぎなかったが、今年3月以降倍増した。ツアーに比べ申請者が少ないことに目を付けた旅行会社が、自由旅行の名目で申請を行っていることが原因のようだ。

 また、食事や宿泊施設、ショッピングを一定基準以上とする条件で、業者が優先的に申請できる「優良ツアー」、健康診断や美容医療などを目的にした「医療観光(メディカルツーリズム)ツアー」の名目で入境するものの、実態は普通の観光ツアーというケースもあるという。

 特に「医療観光ツアー」では、医療機関で血圧の測定や血液検査のみ実施、医療機関に30分滞在し、バスの中でフェースマスクを行うことを「医療」として、残りは観光に当てるツアーも登場している。医療観光ツアーは財力証明書があれば申請可能で、観光ツアーの受け入れ上限に含まれず、自由旅行のように開放都市を設けていないなど規制が少なく、このため名ばかりのツアーが生まれているようだ。

 こうした事態を受けて観光局は、これら問題ツアーを実施した旅行会社に対し、中国人観光ツアー業務の1年停止や、中国の違法業者に対しては入境許可を発効しないなど罰則を引き上げた。

抜き打ち検査を実施

 観光局は10日、台北市内で中国人観光ツアーの品質に関する抜き打ち検査を実施した。対象は▽宿泊施設、3軒▽レストラン、3店▽土産物店、3店▽観光バス、27台▽中国人観光ツアー、34組▽観光ガイド──。一部施設で安全面などに問題が見られたものの、重要な問題は見つからなかった。

 観光局は今後も同様の検査を行い、中国人観光ツアーの品質向上を推進していく方針だが、台湾の旅行業界からは「効果がない」との声が上がっている。

価格競争、目立つ弊害

 業界関係者は、2008年に中国人観光ツアーを開放し、3,600億台湾元(約1兆2,300億円)余りの外貨収入が台湾にもたらされたが、旅行業界は価格競争にさらされていると嘆いた。中国人観光ツアーを手掛ける旅行会社は、上位20社のうち香港資本が半数を占めており、ホテル、観光バス、ガイドまで全てを担うことで台湾の旅行会社より低コストに抑えていると指摘。もともと中国人観光ツアーは利益が少なく、地場旅行会社は土産物店などからのマージンに頼らざるを得ない状況で、ツアーの質低下につながっていると説明した。

 マージンに頼っているのは観光ガイドも同様だ。観光ガイドは最低賃金が保証されておらず、マージンや旅行会社からツアー1日当たりで支払われる手当が収入となる。あるガイドによると、10年前の手当は3,000~3500元だったものの、中国人観光ツアーの開放後は、旅行業界の低価格競争のあおりで手当が減らされ、ここ5年で2,500元から少ない時で1,000元になることもあるという。現在、手当を廃止する旅行会社も出てきたといい、暮らしていけないと訴えた。

 なお、観光局によると、中国人観光ツアーの場合、手当は1,500元と定められており、今後実態を調査していく考えだ。また、観光ガイドの最低賃金制導入も視野に入れる。