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故宮展開幕へ、「国立」表記問題に決着


ニュース 社会 作成日:2014年6月23日_記事番号:T00051090

故宮展開幕へ、「国立」表記問題に決着

 東京上野の東京国立博物館(東博)であす24日より、国立故宮博物院(台北市士林区)の文物を展示する初の特別展「神品至宝展」が予定通り開催されることが決まった。同展示会をめぐっては、日本の協賛マスコミ8社が制作したポスターやチケットに、「国立」の2文字が記載されていなかったことを台湾側が問題視。馬英九総統が修正されない場合は展示を中止するよう指示したため、成り行きが懸念されていた。しかし、東博側が誤りを認めてポスターなどの交換に動いたため、予定通り開催されることで落ち着いた。


駅ポスターにはまだ交換が間に合っていないものもあるようだ。台湾が約束破りに怒るのは当然だが、馬総統の姿勢は強硬過ぎるとの批判も一部で出た(22日=中央社)

 東博によると、昨年10月に故宮との間で特別展開催に向けて協約書を結び、その中で「国立故宮博物院」の正式名称を使用することで合意していた。一方、NHKや読売新聞、産経新聞など特別展に協賛する大手マスコミ8社は、宣伝ポスターやチケットに「国立」を入れず単に「台北 故宮博物院」と表記したため、ポスター・チケットは「国立」を入れた東博版と、入れなかったマスコミ版の2種類が併存することとなった。

 そして6月16日、「国立抜き」のポスターが東京の市街に張り出されていることが故宮側の知るところとなった。故宮の馮明珠院長は、協約書の取り決めが破られたとして、銭谷真美・東博館長に抗議書を送るとともに、至宝「翠玉白菜」を東京に輸送する担当者に対し、東博による是正措置が取られない限り開封作業は行わないよう指示した。

 ただ、故宮は翌17日に「翠玉白菜」の輸送作業を予定通り実施した。この理由について馮院長は、銭谷館長が直ちに改善措置を約束したこと、また、輸送を遅らせた場合、24日からの開催スケジュールに間に合わなくなり、故宮側が評判を落とす恐れがあったことを挙げた。

 一方、馬総統は20日、展示中止も視野に訂正要求を行うとともに、開幕セレモニーへの参加が決まっていた周美青総統夫人の訪日延期を表明した。

故宮、「誠意を評価」

 23日付聯合報などによると、東博と協賛マスコミはこれを受けて、22日午後5時までに上野や日本橋など地下鉄駅20カ所、JR線路脇の46カ所の大型看板、および京王線の100枚のポスターを全て差し替えた。東博はチケットも「国立抜き」で未販売のものは廃棄するとともに、既に販売されたものは全て「国立入り」に交換すると表明、「国立抜き」のチケットでは入場を認めないという。

 故宮は22日深夜、「誤りを正す東博の誠意は伝わった」と表明、訂正の進度を見守るとしつつも、予定通り特別展を開催する方向となった。22日に訪日を見合わせていた馮院長も、23日の午前便で東京に到着した。

「北京の例に倣う」=NHK

 マスコミ8社が「国立」の文字を抜いた理由について、幹事社であるNHKの広報局はワイズニュースの取材に対し、「以前、北京の故宮博物院の展覧会を行った際も『北京 故宮博物院』と表記しており、宣伝・広報の上ではこうした表記が日本国内では一般的との共通認識で各社が合意した」と説明した。ただ、こうした弁明に対しては、台湾メディアから「北京の故宮博物院には『国立』という冠が付いておらず、ごまかしにすぎない」との批判も出ている。日本メディアは通常台湾を国扱いする表記を避けているため、普段の習慣にのっとっての判断とみられる。

「日本メディアが集団封殺」

 聯合報はまた、今回の問題を日本メディアが集団封殺したと報じた。同紙によると、22日に報道を行ったのは「親台的な」産経新聞と、協賛を取りやめた日本経済新聞がインターネットニュースで報じただけで、総統府が発表した周美青夫人の訪日延期も共同通信社と産経新聞が報道したのみだったという。聯合報は「中国タブーに触れないこと、台湾からの抗議を冷たくあしらうことに日本メディアには暗黙の了解があることを示している」と指摘した。

 元中国時報東京特派員で、東京在住のコラムニスト、劉黎児氏も23日付蘋果日報のコラムで、「日本メディアは非常にずる賢く、選んでよい題材だけを選び、今回の問題では共同通信以外の大手は報道しない。自分たちのミスを報道しないのも日本メディアの欠点だ」と批判した。