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台中BRTスタート、公共交通の変革役担う


ニュース 運輸 作成日:2014年7月28日_記事番号:T00051777

台中BRTスタート、公共交通の変革役担う

 台中市が交通渋滞緩和に向けて建設を進めているバス高速輸送システム(BRT)で、初の路線となる藍線(台湾鉄路・台中駅〜静宜大学、17.2キロメートル)が27日、営業を開始した。台湾の大都市にBRTが導入されたのは初めて。将来的に台中全29区を結び、建設中の都市交通システム(MRT)と合わせて、同市の公共交通の利便性を飛躍的に向上させることが期待されている。


BRT車両。最大120人を載せることができる
(27日=YSN)

 台中市のBRTは、全長18メートル、最大120人乗りの連結バスが専用レーンを走行する。プラットホーム付きの専用のバス停が設けられ、乗客はICカードを使って改札機で料金を清算する仕組みだ。悠遊カード(イージーカード)、台湾智慧カード(台湾通)、一卡通(Iパスカード)、高速道路の自動料金収受システム(ETC)のE通カードの4大交通カードが全て利用できる。

 初日はバス停や専用レーンが未完成のままの「見切り発車」となった。バス停に至っては台中駅から静宜大学まで21カ所のうち、外観工事が完了したのは東海別墅の1カ所のみで、いまだに足場パイプとビニールシートに覆われているバス停もあった。当初利用できるバス停は11カ所、そのうち7カ所は東海大学以西の郊外で、市中心部では台中駅、中正国小、市政府、秋紅谷の4カ所でしか乗降できない。

 8月10日からは新光/遠百など4カ所が追加開放され、翌週17日より彰化銀行、仁愛医院を除く19カ所で乗降できるようになる。バス停に改札機が設置されICカードの利用が可能になるのは8月10日からで、1年間は運賃無料となる。その後は8キロまでは無料、8キロ以降は2キロごとに1台湾元(約3.4円)という台中市内バスの料金体系が適用される。

運行は6分に1本

 BRT藍線は6分に1本の速いペースで運行される。初日は台中駅から終点の静宜大学まで約50分かかった。一般の路線バスの1時間とあまり差はなく、運営会社の台中快捷巴士は、まだ専用レーンが未完成で一般道を走行しなければならない区間が多いことを理由に挙げた。専用レーンが整備され、8月下旬以降にコンピューターによる信号制御システムが導入されれば40〜45分に短縮できるという。


バス停はシロイルカをイメージした(27日=YSN)

 バス利用者には便利な一方、藍線が走行する台中最大の幹線道路、台湾大道は、片側3〜4車線の区間でBRTに上下2車線を専用レーンとして割り当てたため、通勤時間帯の渋滞がより深刻化する可能性がある。

 建設資材が積まれたままのプラットホームの利用を余儀なくされた乗客の中には、台中快捷巴士の係員に不満を述べる人もいた。関係者によると、11月下旬の台中市長選の世論調査で、再選を目指す胡志強市長(国民党)が、民進党の対立候補にかなりのリードを許しており、市民に業績をアピールする必要から開業日を早めたという。

MRTの救世主に?

 台中市では現在、MRT緑線(北屯維修機廠〜高鉄台中)と紅線(豊原〜大慶)の建設を進めており、緑線は2017年末の全線開通を目指している。BRTをMRTに先立って整備を進めるのは、MRTの利用者増が一つの大きな目的だ。

 高雄市のMRTは08年の開業以降、一度も旅客輸送量が損益分岐点に達したことがなく苦しい経営が続いている。これは移動の足にバイクを使う市民の習慣がなかなか変わらなかったためで、MRT駅までのアクセスの不便さも要因の一つとして挙げられている。BRT網を先に整備しておけば、MRT駅までの交通手段が便利になり、MRT利用者が2〜3割増えて「高雄の二の舞を避けられる(台中快捷巴士)」効果を期待している。


BRTの延伸計画図(台中市交通局提供)

 BRT藍線は今年中に台中港まで、来年には大甲、清泉崗空港(中部国際空港)まで延伸する。さらに紫線(松竹〜大慶、16キロ)と棕線(后里〜豊原、18キロ)も来年相次いで着工する予定だ。

(取材/ワイズニュース)