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経済の中国傾斜に警鐘、「香港と同じ道たどる」=自由時報


ニュース 政治 作成日:2014年10月6日_記事番号:T00053096

経済の中国傾斜に警鐘、「香港と同じ道たどる」=自由時報

 香港の民主化デモは9日目に入った6日、依然政府と学生・市民の間で膠着(こうちゃく)状態が続いているが、独立派寄りの自由時報は6日付で、香港は経済面で中国に取り込まれた結果、政治面で中国に対する交渉の駒を失っていると香港民主派の弱みを指摘。台湾も経済の中国傾斜路線を続けた場合、やがては香港と同じ道をたどると現状に警鐘を鳴らした。


香港のデモ現場では週末、デモに反対する一部市民との間で衝突も見られた。当局は依然、対話に向けた交渉が不調となれば強制排除も辞さない構えだ(6日=中央社)

 自由時報は、中国は1997年のアジア金融危機や03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)のまん延など、香港経済が危機に見舞われるたびに、経済・貿易関係緊密化協定(CEPA)締結や年間約2,000万人に上る中国人観光客を送り込むことなどによって危機解決を助けつつ、経済で香港を取り込んでいったと指摘した。

 それにより表面上は1人当たりGDP(域内総生産)3万8,000米ドルの発展した都市が維持されているが、実際は貧富の差がひどく、中国から移民が大量に流入し、中国人児童の就学や、中国人妊婦による出産のための入院、中国人観光客による粉ミルク買い占めに見られるように、以前から香港に住んでいた住民は就業、就学、医療の機会が奪われ、生活の質が大幅に低下。さらに中国のブラックマネーによる投機で不動産価格が高騰、中産階級が不動産を買えなくなったとした。

 実業界でも中国政府との関係によって特権的な利益を得ようという風潮が生まれ、自由競争を重視する企業家精神が失われ、自由経済が変質させられたという。香港は既に中国の経済的植民地になっており、中国が中国人観光客による香港旅行をストップしただけで、香港経済は耐え難い打撃を受けると指摘した。

 同紙は、香港が台湾に与える教訓は、「経済の過度の中国傾斜は、専制独裁への帰らざる道」だとして、海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)、中国人観光客の受け入れ、サービス貿易協定、物品貿易協定、自由経済モデル区などの政策は明らかに香港と同じ道を歩んでおり、馬英九政権の傾中政策を阻止しない限り台湾は経済的自主性を失い、中国がいざ台湾を踏みにじろうというとき、対抗する武器がなくなると危機感を示した。

国民党寄りメディアも批判

 香港民主化デモは、台湾では与野党を問わず一国二制度の失敗の反映と受け止められている。本土派の台湾団結聯盟(台聯)の黄昆輝主席が4日に、「台湾人は目覚めなければ、いつでも『第2の香港』になり得る」と訴えたのは当然だが、国民党寄りの聯合報も6日、謝邦振副編集長がコラムで「一国二制度は互恵的であってこそ、安定した(同制度を約束した)50年を送ることができ、それでこそ返還に意義がある」と指摘した。

 また、李登輝政権で海峡交流基金会(海基会)初代秘書長を務めた陳長文氏は同じく国民党・中国寄りの中国時報で、「台湾と大陸(中国)が一つの国になるのであれば、双方によって良い制度を設ける以外になく、大陸はしっかり向き合わなければならない」と呼び掛けた。

「いざというときは香港犠牲に」

 香港民主化デモの影響について、政治大学東亜研究所の寇健文所長は、台湾では北京当局のデモへの姿勢と対応手法が注視されており、それが中台関係に一定の影響を与えるとの見方を示した。

 そして、北京が受け入れられる最低ラインは「有権者1人1票の選挙」であり、行政長官候補者を選定する権利を手放すことはないと分析し、反中的な人物が香港行政長官に就任することの阻止、および「香港モデル」の中国大陸への波及防止をその理由に挙げた。北京にとってこれは譲れない核心的利益で、香港の繁栄も重要ではあるが、いざというときは犠牲にすると指摘した。

 その上で、民主化デモの運動家らは、北京がのめない条件に固執すれば両者が共に傷付く結果もあり得ることを見据え、今回は妥協して力を蓄えてこそ、将来的に政治改革の道に近付けると提言した。