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退職金を法改正で保護、中小企業には打撃の恐れ


ニュース その他分野 作成日:2014年11月7日_記事番号:T00053708

退職金を法改正で保護、中小企業には打撃の恐れ

 行政院は6日、退職金や解雇手当てなどの労働債権を、企業が倒産などによって弁済する際に銀行債権と同一順位とし、同時に雇用主が労働者の賃金総額の2〜15%の退職準備金の計上を怠った場合、最高45万台湾元(約170万円)の罰金を科す労働基準法改正案を閣議決定した。労働者の権利を高める一方で、中小企業がコストの高まりで銀行融資を受けにくくなり経営が悪化する副作用も懸念されている。7日付工商時報などが報じた。

 陳雄文労働部長は、労働債権が銀行債権と同等の最も高い弁済順位を得られるとして、解雇した従業員への退職金などの支払いをめぐり争議が続いてきた化学繊維メーカー、華隆(苗栗県)の例を挙げて意義を説明した。華隆では、大園工場の土地を競売に掛けて24億元の現金を得て、2億元を税金として支払った。しかし銀行が債権の優先順位に基づいて21億元を回収した後残ったのは200万元で、従業員1人当たりで退職金と解雇手当を合わせてたった2,300元しか得られない状況になったという。なお、華隆は頭份工場の租借期限が切れる来年末に同工場の売却を予定しており、改正法が予定通り施行された場合、華隆の元従業員は第一順位の弁済対象となるためより多くの金額を手にできるという。

 退職準備金の計上に関しては、雇用主に対して毎年年末に専用口座の残高の確認を求め、翌年に退職金支払いに不足しているのであれば翌年3月までに不足分を積み増し、そうしなければ罰金が科せられるとした。また、金融機関が事業体に融資する際に、労働者の退職準備金の積み立て状況を地方主管機関に確認することも義務付けた。

 同改正案は立法院での承認が必要だ。施行には1年間の猶予期間を設けるが、過去にさかのぼって実施する。このほか新たに、▽雇用主は労働契約の終了する30日以内に解雇手当を支払わなければならない▽雇用主は労働者の退職日から30日以内に退職金を支払わなければならない──ことが新たに労基法に加えられた。

労働者66万人に影響も

 陳労働部長はまた、退職準備金の計上に関して「(旧退職金制度で)最低限の2%の積み立てもできないような企業が、さらに規模を拡張したいというのであれば銀行は融資をすべきではない」と発言した。これに対し杜紫軍経済部長は「正常な経営を行っている企業にとって融資を受ける権利は守られるべきだ」と応じた。与信リスクの高まりを嫌気した銀行が融資の引き揚げなどを行えば、企業の投資意欲に影響するためだ。

 陳労働部長は、退職金の受領が完全に保障されているわけではない旧制度を選択した労働者66万人には影響が及ぶ可能性も指摘した。これらの労働者は計16万社の中小企業に散らばっており、融資を受けられない問題が起きないよう、来年中にまず退職金の積み立て状況の精査を終える考えだ。

 工商時報は労基法改正について、「金融機関の懸念を呼んでおり、雇用主に不利な政策が労働者にとって必ず有益と言えるのか。企業の経営環境をさらに悪化させるのではないのか」と憂慮を示した。

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