ニュース その他分野 作成日:2014年11月11日_記事番号:T00053767
中国と韓国による自由貿易協定(FTA)交渉が10日実質的に妥結したことを受け、台湾産業界から打撃を懸念する悲痛な叫びが上がっている。中韓FTAは半年以内にも発効となる見通しで、台湾では特に中小企業への影響が大きく、中小企業の集中する中南部が打撃を受けるとの見方が出ている。経済部は遅れている中台物品貿易協定の交渉を早期に進め、韓国以上の条件を引き出すことが切実な課題となった。11日付工商時報などが報じた。
朴槿恵(パク・クネ)大統領(左)と中国の習近平国家主席(右)は笑顔で握手を交わし、良好な関係を印象付けた(10日=中央社)
中韓FTAは物品・サービス貿易、投資など17分野にわたる。今後中国では全国人民代表大会(全人代)常務委員会、韓国では国会の批准手続きを経て、3~6カ月以内に発効となる見通しだ。物品分野では、発効から20年かけて韓国側は貿易品目の92%、中国側は91%の関税を撤廃する。
台湾と韓国は共に中国が最大輸出先で、その割合も台湾が21.96%(今年1~9月)、韓国が26.05%(2013年)と約4分の1を占める他、製品構成も77%が重複している。中韓FTAの脅威は早い段階から叫ばれてきたが、台湾はヒマワリ学生運動の影響で、中台物品貿易協定に先行した中台サービス貿易協定に対する立法院での承認見通しが立っておらず、物品貿易協定も妥結が来年に持ち越しとなった。この結果、台湾より遅れて中国とのFTA交渉に入った韓国に先に妥結された。経済部は当面、中台物品貿易協定締結を急ぎ、中国側に韓国以上の開放を求めていく考えだ。
経済部国際貿易局(国貿局)は同日、中韓FTAによる影響の初期試算として、台湾域内総生産(GDP)成長率が0.5%押し下げられ、輸出額は1.34%(37億5,000万米ドル)減、総生産額は0.98%(89億米ドル)減と発表した。中台物品貿易協定の進展がなかった場合、製造業の生産額は3~5年で2,600億~6,500億台湾元(約9,800億~2兆4,400億円)減少するとの試算もある。
失業者90万人予測も
中華民国全国工業総会(工総、CNFI)は、産業界は「痛み、怒り、懸念」を感じていると訴えた。「痛み」に関しては中国に進出した台湾企業(台商)が長年苦労して開拓してきた市場を韓国に奪われると嘆いた。経済部はこれについて7月、▽液晶パネル▽石化製品▽偏光板▽鉄鋼▽紡織▽工作機械▽ガラス▽自動車──8分野への打撃が大きく、韓国への発注切り替え額は年間で最大84億2,000万米ドルに上るとの試算を示している。「怒り」は、与野党の政治闘争によって台湾の競争力にかかわる重大案件が進展を見ないことに向けられている。
「懸念」は、産業が衰退すれば就業機会が失われ、失業者が増えることだ。中韓への産業拠点移転が進み、中には90万人が路頭に迷うとの試算もある。厳しい打撃を受けるとされる石化業界大手の台湾塑膠工業(フォルモサ・プラスチックス、台塑)の李志村董事長は、若者の賃金は現在でも月2万2,000元と言われるが、企業の競争力が低下すれば1万5,000元まで下落すると憤った。
影響は来年下半期から
一方、中華民国全国中小企業総会の林慧瑛理事長は、中韓FTAによって中小企業と中南部が深刻な打撃を受けるとの見方を示した。大企業は高関税の台湾からの輸出を避け、低関税で輸出できる地域に生産拠点を移すことで打撃を回避することもできるが、中小企業はそうもいかず、韓国との価格競争は避けられないと指摘。また、台湾は97%が中小企業で、そのうち8割が中南部に集中していると説明した。
外資系証券会社は、台湾への打撃は来年下半期から顕在化するとの見方を示した。コスト競争力低下に加え、円安で韓国もウォン安を誘導するとみられ、通貨安競争との挟み撃ちとなると予測した。
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