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ITA拡大で米中合意、関税減免効果8億ドル


ニュース 電子 作成日:2014年11月12日_記事番号:T00053792

ITA拡大で米中合意、関税減免効果8億ドル

 デジタル製品の関税撤廃を目指す情報技術協定(ITA)の拡大交渉で、米中が11日、約200品目を新たに関税撤廃の対象とすることで合意した。これにより台湾は集積回路など約100品目の輸出で年間8億1,600万米ドルの関税減免効果が見込まれ、輸出競争力の向上が期待できる。12日付聯合報などが報じた。


卓経済部次長は「パネルとIT関連の工作機械が対象から外れたのは残念だが、全体としては朗報だ」と語った(11日=中央社)

 ITAは1997年に発効した世界貿易機関(WTO)の複数国間協定の一つで、78カ国・地域が加盟。現在、パソコンや携帯電話など約140品目を対象としている。ITA発効後、世界のデジタル製品貿易量は大幅に増え、台湾は96年の約500億米ドルから12年は1,500億米ドルへと3倍に増加、同年輸出額全体のほぼ半分を占めた。

 一方、協定発効後に新たなデジタル製品が続々と誕生するにつれ、関税撤廃の対象拡大を求める声が高まり、12年に台湾を含む5つの加盟国・地域が200品目余りの関税撤廃を求めてITA拡大交渉がスタートした。現在54カ国・地域が参加しているが、後発の中国が自国の半導体産業を守りたい思惑もあり、これまでは交渉に大きな進展が見られなかった。

 しかし、米中両国はこのほど北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会談を前に交渉を詰め、ついに合意に至った。関税撤廃の対象は新たに▽集積回路▽偏光板▽発光ダイオード(LED)バックライトモジュール▽半導体製造プロセス・フラットディスプレイの製造装置と部品▽音響映像設備(スピーカー、マイクロホンなど)▽医療設備──など約200品目に広がる見通しだ。

 このうち、台湾は▽液晶装置▽その他集積回路▽デジタルカメラ・レコーダー▽携帯電話部品▽全地球測位システム(GPS)──など約100品目の輸出で恩恵を受ける。経済部工業局の試算によると、対象品目は台湾の年間輸出額全体の5%を占める。

 米中間が合意に達したことで、ITA拡大交渉は早ければ来月にジュネーブで行われる交渉参加国による協議を経て締結される見通しとなった。経済部の卓士昭常務次長は、来年7月か来年末にも発効すると予想した。

パネル・工作機械は対象外

 今回関税撤廃の合意対象品目には液晶パネルとIT(情報技術)設備生産用の工作機械が含まれなかった。中国が自国メーカー保護の目的で関税撤廃を拒んだためだ。杜紫軍経済部長は、今後、中国との物品貿易協定で関税引き下げ対象に盛り込むよう交渉に力を尽くしたいと語った。

受託企業は生産コスト削減

 台湾積体電路製造(TSMC)は、同社の製品は既に全て関税が撤廃されており、今後のITA拡大交渉の最終結果がどうであれ影響は小さいとコメントしたが、半導体業界の関係者は、関税撤廃品目の拡大で台湾のファウンドリー、パッケージング・テスティング(封止・検査)業界は出荷拡大が期待できると指摘した。

 ノートパソコン受託生産大手の広達電脳(クアンタ・コンピュータ)は、台湾の受託生産企業は多くが中国沿岸部の保税区に工場を持っており、もともと関税面で優遇を受けていたと指摘。ただ、対象品目の拡大により部品の調達コストを削減でき、結果として生産コスト削減が期待できるとした。

 GPS大手の神達電脳投資控股(マイタック・インターナショナル)は、同社の製品の多くは中国で生産しており、新ITAの発効で米国での関税が引き下げられれば末端価格の値下げにつながる可能性があると指摘した。ただ、消費を刺激する効果があるかは観察が必要との考えも示した。

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