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立法院占拠学生ら119人起訴、「違和感あり」批判も


ニュース 社会 作成日:2015年2月11日_記事番号:T00055448

立法院占拠学生ら119人起訴、「違和感あり」批判も

  台北地方法院検察署(地検)は10日、昨年3~4月に中台サービス貿易協定に反対して立法院を占拠した学生ら延べ119人を、犯罪扇動、公務執行妨害などの罪で起訴した。24日間で延べ78万人を動員し、台湾史上最大の学生運動となった「ヒマワリ学生運動」に対し法的責任を求めたものだが、政府報道官は「寛容な態度」を希望するとして重い判決が下されないよう望むことを示唆し、世論に配慮する姿勢を見せた。11日付蘋果日報などが報じた。


馬政権としては違法行為への責任を追及した形だが、意見表明のための抗議は刑事処分の対象にすべきでないとの意見もある(YSN)

 学生らは、昨年3月17日に与党国民党が立法院委員会で中台サービス貿易協定の審議を強引に通過させたことに反対し、翌18日夜に立法院に侵入。翌月10日まで占拠を続けた。占拠期間中の3月23日には行政院への突入、占拠終了後の4月11日には警察の強制排除に不満を抱いた学生らが、台北市警察局中正第一分局(中正一分局)を取り囲む事件も起きた。

 台北地検は、ヒマワリ学生運動を▽立法院侵入・占拠▽行政院侵入▽中正一分局包囲──の3つの案件に分け、それぞれ延べ22人、93人、4人を起訴した。

 このうち、立法院侵入・占拠では、学生リーダーの陳為廷氏(24、清華大学院生)、林飛帆氏(26、台湾大学院生、兵役中)、黄国昌氏(41、中央研究院法律学研究所研究員)らが公務執行妨害、扇動などの罪で、行政院侵入では同じく学生リーダーの魏揚氏(26、清華大学院生)が扇動、建造物侵入の罪で、中正一分局包囲では洪崇晏氏(24、世新大学院生)が集会遊行法(集会デモ法)違反、公務員・公署侮辱罪で起訴された。各罪とも刑期は最高で懲役1〜7年。

行政院「告訴撤回せず」

 孫立群行政院報道官は10日、行政院には公的機関の安全を守る責任と義務があり、告訴を取り下げるつもりはなく、全て司法の処置に委ねると表明。ただ一方で、被告の多くが青年・学生であるため、寛容な態度で扱われることを望むとも語った。学生らの行政院侵入による窓や机、棚の破損など被害は少なくとも300万台湾元(約1,100万円)以上とされる。

1周年イベント計画

 台北地検の起訴決定を受け、陳氏は同日、「負うべき法的責任は取る」と述べた。一方で、行政院占拠を図った学生らの強制排除時に暴力を使った警察や、強制排除を指示した江宜樺行政院長(当時)が1人も起訴されていないことには「不公平だ」と不満をあらわにした。

 黄氏は「学生を被告に加えるとはふざげている」と憤った。ヒマワリ学生運動は約1カ月後に1周年を迎えるが、記念イベントを催し、学生運動の訴えを実現していくと語った。

 魏氏は、政府への抵抗権を行使する社会運動家にとって、起訴されることは「最高の処置」と皮肉った上で、ヒマワリ学生運動は民主主義の価値、プロセスをなおざりにする政府への反発であり、馬英九政権の対中傾斜への社会の怒りだと指摘し、政府は台湾の土地、人民、正義に寄り添った経済政策を実行すべきと訴えた。

「民主主義追求が罪か」

 野党民進党の蔡英文主席は10日夜、自身のフェイスブックに美麗島事件、野百合学生運動、ヒマワリ学生運動の関連写真に「民主主義の追求が罪ならば、われわれ全員に罪がある」との一言を添えた画像を公開し、暗に検察の起訴決定を批判した。同党の陳其邁・政策委員会執行長は「政府の意向に沿った政治的で報復的な起訴だ」と強く批判した。

 一方、蔡正元・国民党立法委員は、法律は国家の最後の防衛ラインであり、「ようやく正義が下された」と検察の起訴決定を支持した。

専門家、起訴の正当性に疑問

 廖達琪・中山大学政治系教授は、ヒマワリ学生運動の訴えには正当性があったが、その行為の合法性には問題があったと指摘。一方、検察が学生らを起訴することには合法性があるが、正当性の有無を裁判所がどう判断するか観察が必要だと述べた。