ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

「歴青炭・石油コークスを禁止」、中南部6県市がPM2.5対策


ニュース 公益 作成日:2015年4月15日_記事番号:T00056439

「歴青炭・石油コークスを禁止」、中南部6県市がPM2.5対策

 雲林県など中南部6県市は14日、PM2.5(微小粒子状物質)による大気汚染の主因とされる発電燃料の歴青炭と石油コークスの使用を、各地の事業者に対して禁止していく方向で合意した。越境飛来するPM2.5による被害解消に、地域一丸で排出削減に取り組む必要があると判断。雲林県が早ければ1年後に関連条例を施行して先陣を切る構えだ。ただ、中南部には両燃料を使用する事業者が多く、電力の安定供給を目指す中央政府のエネルギー政策とも衝突するため、構想の実現性には疑問も投げ掛けられている。15日付経済日報などが報じた。


雲林県は既に両燃料の使用禁止を定めた条例案を作成済みで、現在県議会で審議中だ(雲林県リリースより)

 6県市は李進勇県長が発起人となった雲林の他、▽台中市▽彰化県▽嘉義県▽嘉義市▽台南市──で、首長は全て野党民進党だ。国民党県長の南投県は参加しなかった。

 李雲林県長は、中南部はPM2.5による大気汚染が最も深刻だが、雲林県の場合、汚染源の約40%が県外からの飛来によると指摘。歴青炭と石油コークスの使用を禁止し、液化石油ガス(LPG)や液化天然ガス(LNG)に切り替えれば、雲林県だけで毎年8,200トンの窒素酸化物(NOx)、5,595トンの硫黄酸化物(SOx)、757トンの粒子状物質の排出を削減できると述べた。

 嘉義市の涂醒哲市長は、嘉義市は工場が少なく、PM2.5の大規模汚染源もないが、昨年のPM2.5平均観測値は全土で最悪だったと指摘。台塑集団(台湾プラスチックグループ)の第6ナフサ分解プラント(雲林県麦寮郷、通称六軽)からの排出が最大の原因であり、大気汚染対策は地域共同での推進が重要と語った。

電力が3割減る=経済部

 6県市が歴青炭と石油コークスの使用の全面禁止に踏み切った場合、▽台湾電力(TPC)台中火力発電所(台中市龍井区)▽中国鋼鉄(CSC)傘下の中龍鋼鉄(同)▽六軽──をはじめ、電力、鉄鋼、石化、紡織、製紙事業者が打撃を受けることになる。特に台プラは六軽の他、傘下の台湾化学繊維(フォルモサ・ケミカルズ& ファイバー)が嘉義県と彰化県に、南亜塑膠工業(ナンヤ・プラスチックス)が彰化県に工場を持ち、グループ事業への打撃は必至だ。

 経済部能源局(エネルギー局)は、両燃料の使用が禁止されれば中部の発電所やコジェネレーション(熱電供給)システムを使用する民間事業者は稼動できなくなり、台湾の電力供給が最大3割減少し、間違いなく電力不足になると懸念を示した。発電事業者は関連の環境保護法規を順守しており、地方自治体は事業者の経済活動を制限するような新条例を制定すべきでないと批判した。

 TPC台中火力発電所の昨年の発電量は428億キロワット時(kWh)で、台湾の発電量全体の19.5%を占めた。歴青炭の使用が禁止されれば高コストの天然ガスなどを燃料として使わねばならず、発電コスト上昇で電気料金引き上げが必至になると経済日報は分析した。

 一方、経済部工業局は、6県市の政策は年産額1兆2,000億台湾元(約4兆6,000億円)、就業者数1万人以上の六軽のみならず、川上、川下の石化・プラスチック産業に影響を与え、生産額への影響は年間数兆元規模になると指摘した。

「ポピュリズム」との批判も

 専門家からは、行政命令で業者に特定燃料の使用禁止を強制するよりも、学識者や環境保護団体を集めて政策の方向性に関わるコンセンサスをまとめ、その後業者と協議して合理的な大気汚染源の排出削減計画を作成させた方が実現性が高いと指摘する声が上がった。また、代替電源を確保せずにエネルギー政策に関わる議題を進めるのはポピュリズムだとの批判も出ている。 

【表】