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馬総統らの告発勧告、ドーム問題で廉政委


ニュース 建設 作成日:2015年5月11日_記事番号:T00056880

馬総統らの告発勧告、ドーム問題で廉政委

 柯文哲台北市長が汚職撲滅と公共事業の透明化を目指すために設置した台北市政府廉政透明委員会は8日、馬英九総統と李述徳・台湾証券交易所(台湾証券取引所、TWSE)董事長がそれぞれ台北市長、台北市政府財政局長に在任中、台北文化体育園区(通称・台北ドーム)の開発に絡み、事業者の遠雄企業団(ファーグローリー・グループ)に利益供与を図ったことは明確だとして、2人の刑事告発を勧告する調査報告書を発表した。9日付蘋果日報などが報じた。


馬総統は9日、「全て法に従って処理する」と述べた(9日=中央社)

 報告書はまた、遠雄とのBOT(建設・運営・譲渡)方式による事業契約を解除すべきだと指摘した。

 調査を担当した鄭文龍弁護士は「馬総統と李董事長が(廉政委の)専門小委員会に来て説明を行うことを歓迎する」と述べた上で、廉政委では委員の意見が分かれたが、議論の末に告発を勧告することが決まったと説明した。

 これを受け、台北市の鄧家基副市長は、2人を告発するための行政手続きを進める一方、市政府法務局に契約解除の是非を検討するよう求める考えを示した。

録音ファイルが決定的証拠

 今回の報告書で利益供与の決定的な証拠となったのは、2004年9月20日に遠雄の趙藤雄董事長と当時の馬台北市長がひそかに会った当時の録音ファイルだ。

 記者会見で流された録音では、遠雄が市政府に権利金を支払わないことで合意したことを示す李財政局長の発言が収められている。

 李局長は「重大な問題なので、趙董事長と市長が直接会い、意思疎通を行った上で意見が一致した。市政府幹部はこの部分(権利金)についてはあえて触れないことにした」と発言している。

 そもそも、台北ドーム計画で市政府は03年、「権利金は売上高から一定比率を徴収する」と公告。その後10回にわたる市政府と遠雄の契約交渉でも、遠雄が権利金を支払うことが前提になっていた。しかし、馬市長と趙董事長による「密会」から3日後に行われた第11回交渉で権利金をゼロとする方針へと突然転換した。

 鄭弁護士は、権利金ゼロの方針は公共建設民間参加促進法(促参法)に違反するものだとした上で、遠雄の投資計画によれば、台北ドーム事業で2,800億台湾元(約1兆1,000億円)の売上高に達すると試算しており、仮に1%を権利金として受け取るだけで、市政府は28億元の収入が上がったはずだと批判した。

 また、林富貴弁護士は「趙董事長との密会後、専門的な評価や正式な会議を経ずに権利金免除を決めたとすれば、馬総統は利益供与罪に問われることになる」と指摘した。

遠雄は猛反発

 今回の調査報告書について、遠雄側は猛反発。趙董事長は「一生にわたり不当な利益を得たことはなく、いかなる密約や不法行為も存在しない。もし証拠があれば、私は八つ裂きにされてもよい」と反論声明を出し、馬市長との会見については、「潔白であり、会談の内容は終始透明で、他人に告げられないことはない」と主張した。

 趙董事長はまた、権利金の額について、「0元ではなく、その後市政府との間で利益還元方式で0~1%を支払う方向で話し合っていた」と強調した。

 遠雄が示したのは市政府の公益活動で年間10日間のドーム無償利用を認めるなど6項目の還元策で、趙董事長は「合計すれば1%を超える」と反論した。

市、遠雄、総統府の3者対立に

 今回の調査報告書で、台北市政府と遠雄の対立に加え、馬総統らの告発が勧告され、事態は市、遠雄、総統府という3者の対立に発展した。

 総統府は8日、「政治的迫害で、人を罪に陥れるものだ」と市側を批判。総統府の陳以信報道官によると、馬総統は強い遺憾を表明し、「企業に利益を供与したことはなく、最も厳しい検証を受ける用意がある」と対決姿勢を示した。