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日本食品の輸入規制問題、林農相も「WTO提訴検討」


ニュース 食品 作成日:2015年5月13日_記事番号:T00056952

日本食品の輸入規制問題、林農相も「WTO提訴検討」

 日本産食品に対する輸入規制が15日から強化されるのを前に、日本の林芳正農林水産相は12日、「台湾側に対して引き続き規制強化の撤回を強く申し入れていくが、具体的進展が見られない場合は世界貿易機関(WTO)への提訴も含めて対応を検討する」と表明した。WTO提訴の可能性は4月末に与党自民党内で浮上していたが、農相が言及したのは初めて。台湾側は予定通り規制強化に踏み切る方針で、食品規制問題が日台関係に与える影響を懸念する見方が強まってきた。13日付自由時報などが報じた。


林農相は、規制強化に至った具体的な事実関係などについて台湾側の説明がなされておらず、極めて遺憾だと語った(農水省提供)

 林農相は、台湾の規制強化措置は「科学的根拠に基づかない一方的なものだ」と従来の考えを示しつつ、台湾側に措置撤回を求めていくが、現時点ではWTO提訴の方針は決定していないと述べた。

 林農相の発言に対し孫立群行政院報道官は、同措置は衛生福利部が過去6万件以上の検査データを基に策定したものだと強調した。ただ、実施状況を見ながら措置の内容を見直す可能性もあるとの考えも示した。

 台湾は福島原発事故後、東日本5県の食品輸入を禁止しているが、15日からは同規制に加え、日本から輸入される全食品に対して産地証明が、8都道府県から輸入される特定7項目の食品に対しては放射性物質の検査証明が義務付けられる。

産地証明、日本は非協力的

 衛福部食品薬物管理署(TFDA)は産地証明について、日本政府、日本政府が認定した機関、TFDAが認定した機関が発行したものに限ると公告している。潘志寛TFDA食品組長は、日本側に認定機関のリスト提出を求めているが、日本側はこれを拒否していると説明。このため規制強化後は、日本産食品の輸入時に業者が提出した産地証明を在外機関を通じて確認する必要があり、通関手続きがさらに滞る可能性もあるとの認識を示した。

日台交渉、物別れか

 自由時報によると、衛福部の許銘能次長や法務部、外交部の担当者ら7人は先週7〜8日、交流協会東京本部で日本の関係者らと輸入規制問題について交渉したが、物別れに終わったもようだ。

 同協議で台湾側は、日本側に産地証明と放射性物質検査証明の発行を要求したが、日本側が生産地の都道府県明記を求める台湾側に要求の根拠を示すよう求めたところ、台湾側は根拠となる規定を示すことができなかったとされる。

外交部、日華懇会長の来台拒否か

 自民党の岸信夫衆議院議員らがゴールデンウイークを利用して訪台し、馬英九総統、王立法院長らに規制強化の撤回を申し入れるなど政治的な働き掛けもあったが、効果を発揮していない。自由時報によると、12日には日華議員懇談会(超党派の衆議院議員による日台親善組織)の平沼赳夫会長(次世代の党党首)も訪台を予定していたが、外交部から「来る必要はない」との連絡を受けて訪台を取りやめたという。平沼赳夫事務所はワイズニュースに対し訪台取り止めは認めつつ、「理由は別の予定が入ったためだ」と報道を否定した。

「馬王政争」が日台に影響?

 外交部関係者によると、与野党の立法委員を率いて4月初めに訪日した王金平立法院長は、千葉県で日本の放射性物質検査の実態を視察し、帰台後に政府幹部に報告を行ったが、その後間もなくTFDAが輸入規制の強化を発表した。日本側には王院長の帰台後に被災地からの輸出禁止措置が解除されるとの期待感があったが、王院長を政敵とする馬総統の意向が絡み、規制がさらに強化されたとの見方も出ている。