ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

15年工作機械輸出、台湾元高で前年割れも


ニュース 機械 作成日:2015年5月19日_記事番号:T00057054

15年工作機械輸出、台湾元高で前年割れも

 台湾元が18日の台北外国為替市場で、過去半年余りで最高の1米ドル=30.61元で引けるなど上昇が進む中、工作機械部品大手、上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)の卓永財董事長は同日、台湾元が下落しなければ台湾工作機械産業の今年の輸出額が前年割れに転じる恐れがあるとの見方を示した。台湾元高で海外からの受注が鈍化し、今年1〜4月の工作機械輸出額は10億6,800万米ドルと前年同期比で5.9%減少している。19日付経済日報が報じた。


卓董事長(中)は、欧州市場は宇宙航空産業向けの需要が悪くなく、供給が追い付かない状態だと明かした(18日=中央社)

 台湾元の対米ドル相場は年初の1ドル=約32台湾元から、4月24日までは31〜32元で推移していたが、4月27日には31元を割り、5月18日は一時、中央銀行の防衛線とされる1ドル=30.5元を突破する場面も見られた。

 卓董事長によると、世界の自動車、宇宙航空産業の景気回復を受けて、業界団体の台湾区工具機零組件工業同業公会(TMBA)は当初、台湾工作機械の今年の輸出は前年比10%成長すると予測していた。しかし、ユーロが下落した他、日本円安が続いている影響で、台湾の工作機械メーカーは海外からの受注が鈍化し始めたと指摘した。

 台湾の工作機械輸出額は今年1月に2億8,700万米ドルと前年同月比16.1%増加したが、2月以降は▽2月、2億800万米ドル(10%減)▽3月、3億200万米ドル(9.8%減)▽4月、2億6,900万米ドル(15.7%減)──と3カ月連続で前年割れとなった。

 卓董事長は、特に規格品や小型製品の受注を日本、韓国、ドイツの競合メーカーに奪われており、下半期も受注回復は見込めないと予想した。観測によると、日本の量産型工作機械のうち立形マシニングセンター、横型マシニングセンター、CNC旋盤などは台湾製品との価格差が1割に縮小し、飛ぶように売れているという。これらの製品は従来、台湾メーカーが生産し、中国や東南アジアに輸出してきた主力製品だ。

1ドル=33元に誘導を

 台湾の主な工作機械メーカーは軒並み第1四半期に為替差損が発生し、利益を圧迫した。これを受け、業界から政府に対し、1ドル=33元まで下落させ、企業の国際競争力を回復させるよう求める声が上がった。

 台湾機械工業同業公会(TAMI)の王正青秘書長は、最近多くの工作機械メーカーが新規受注を控えていると明かした。台湾元高により利ざやが縮小したか、顧客から値下げ要求を受けてコスト割れとなり、赤字受注はしたくない考えのようだ。

中銀、外資への監視強化

 銀行の外為部門の主管によると、18日の外資流入は約50億台湾元(約196億円)で、前営業日と合わせ米ドル換算で3億米ドル以上に達した。台湾元の押し上げ要因となっており、輸出競争力への影響は工作機械産業にとどまらないとの懸念が広がっている。このため中央銀行は同日、多くの銀行に対し、金融派生商品の運用規範に注意するよう呼び掛けたという。

 銀行の外為担当者は、中銀が金融派生商品に目を光らせるのは、台湾元高の進行度合いが中銀の防衛ラインに迫っている証拠で、台湾元上昇の勢いを効果的に解消したい考えがあると指摘した。

 外為取引の関係者は、銀行に対する中銀の注意喚起にもかかわらず外資の動きに変化がなければ、中銀は今後、銀行の主管を集めて事情聴取を行い、資金を口座に積んだままにして台湾株式購入に投じない場合、台湾からの資金の引き揚げを求める可能性もあると予想した。

【図】