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中韓FTA調印、台湾サービス業に打撃=中経院


ニュース その他分野 作成日:2015年6月2日_記事番号:T00057314

中韓FTA調印、台湾サービス業に打撃=中経院

 中国と韓国が1日、自由貿易協定(FTA)に正式署名したことを受け、中華経済研究院(中経院)の専門家は、台湾は物品貿易で来年以降に中国からの受注に影響が出始めるが、それ以上に懸念すべきこととして、中韓が2年以内にネガティブリスト方式でのサービス貿易協定の交渉を再開する予定であること、旅行、医療など韓国が強みとするサービス分野での経済協力で合意したことを挙げた。中国は内需拡大のため韓国サービス業者の進出を歓迎し、韓国も中国の巨大市場獲得を狙うなど両国の思惑は一致しており、台湾がライバル視する韓国の競争力が向上すると警鐘を鳴らした。2日付経済日報などが報じた。


ソウルでFTAに署名した中国の高虎城商務相(左)と韓国の尹相直(ユン・サンジク)産業通商資源相(右)(韓国産業通商資源省リリースより)

 中韓FTAは両国議会の承認を経て、年内にも発効するとみられる。中韓はFTA発効から20年で税目の9割強の関税を撤廃する。韓国にとっては国内総生産額(GDP)を0.96ポイント押し上げ、146億米ドルに上る関税減免、就業機会5万3,000件の増加が見込める。台湾への影響について経済部は今年4月、発効1年で台湾のGDPを約0.04%押し下げ、関税引き下げが完了する20年後の時点で、液晶パネルを筆頭に23億4,100万~60億米ドルの受注が韓国に奪われるとの予測を示していた。

 中経院世界貿易機関(WTO)・地域貿易協定(RTA)センターの李淳副執行長は中韓FTAによる物品市場開放について、中国が韓国製液晶パネルに対する関税(現行5%)をゼロにするのにFTA発効から10年かかるなど、やや消極的だと指摘。ただ、両国はサービス貿易協定の締結や、サービス分野での経済協力には非常に積極的で、韓国サービス業は2年後に中国市場への進出拡大が見込め、台湾サービス業に打撃となるとの見方を示した。

 李淳副執行長は、韓国が今後中国とのサービス貿易協定交渉で、中国からどのような優遇措置を得られるかを見極める必要があると指摘。一方、台湾は中台サービス貿易協定が2年以内に立法院で承認されれば、中韓サービス貿易協定がもたらす影響を抑えられると述べた。

韓国の商品、値下げ予想

 なお中韓FTAの開放分野には電子商取引(EC)、金融、通信などサービス業が含まれており、発効後は、韓国の中小企業が手掛けるファッション、化粧品、生活家電、高級食品などの消耗品や、「韓流」ブランドの対中輸出が大幅に増えると予想されている。中国の学者も、中国サービス市場の開放により、韓国の運輸、化粧品、ファッション、娯楽、レジャー産業などが恩恵を受けるとの見方で、具体的には、化粧品やファッション商品の値下げが予想されると述べた。これらの分野の台湾企業にとっては、韓国企業との競争で不利になりそうだ。

台湾製自動車、競争力低下へ

 中韓FTAでは韓国製自動車がゼロ関税の対象から外れたが、現行25%から発効5年で22.5%まで下がるため、中国市場における韓国製自動車の価格競争力は高まる見通しだ。

 台湾の自動車メーカー主管は、台湾の完成車の年産能力は65万〜75万台だが、近年の域内市場の需要縮小で域内向け年産量は34万〜35万台で、生産能力利用率は5割前後と指摘。台湾組み立てメーカーは輸出に頼る必要があるが、台湾の完成車に対する中国の関税が現行の25%のままでは高過ぎると嘆いた。

 台湾の自動車業界関係者は、関税引き下げを実現する中台物品貿易協定の発効見通しが立たない中、中韓FTA発効によって台湾自動車産業の国際競争力がますます低下すると懸念を示した。