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韓国旅行キャンセル続出、MERS拡大で


ニュース 社会 作成日:2015年6月3日_記事番号:T00057342

韓国旅行キャンセル続出、MERS拡大で

 韓国で中東呼吸器症候群(MERS、マーズ)の感染が拡大する中、台湾の交通部観光局の統計によると、2日までに1,500人以上が台湾の旅行社を経由した6〜9月出発分の韓国行きツアーをキャンセルしたことが分かった。夏休みは家族旅行のハイシーズンだが、子どもへの感染を懸念する親が韓国旅行を避けており、業績が前年比7〜8割落ち込んだ旅行業者もある。一方、感染対策用品の販売は爆発的に伸びており、医療用マスクメーカーはフル稼働で需要増に対応している。3日付中国時報などが報じた。


韓国から桃園空港に帰台した旅行者は、「しばらく韓国には行きたくない」と語った(2日=中央社)

 MERSは新型のコロナウイルスによる伝染病で、「第2の重症急性呼吸器症候群(SARS)」とも呼ばれ、SARSウイルスよりも感染力が強いとされる。世界保健機関(WHO)の統計によると、これまで世界で1,154人が感染し、少なくとも434人が死亡した。

 韓国では先月20日に初めてMERS感染者が確認され、今月3日までに感染者は30人に拡大。サウジアラビア(1,014人)、アラブ首長国連邦(UAE、76人)に次ぐ数で、二次感染者を介した初めての三次感染者も3人確認された。韓国では既に58歳の女性と71歳の男性がMERS感染により死亡している。韓国政府は現在、感染した人に接触した約1,300人を医療機関や自宅で隔離する措置を取っている。

日本などに旅行先変更

 韓国行きツアーを中心に手掛ける大都会旅遊(DDV、台北市)の林進栄董事長は、韓国へはツアー客を月平均1,000人送っているが、MERS感染の発生後、キャンセルや旅行先変更が相次いだと説明した。

 旅行代理業、康福旅行社(台北市)の李季柏総経理は、今月22日以降に出発予定の韓国行きツアー客のうち、約5割が旅行先を変更し、うち65%が日本の九州や大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に、残り35%が東南アジアの国に切り替えたと明かした。

 なお、外交部は3日午後、韓国ソウル地区(京畿道含む)への渡航警戒レベルを灰色(注意喚起)から黄色(特別注意し、渡航の是非を検討)に引き上げ、同地区に赴く台湾人に対し、必要のない場合は現地の医療施設に行かないよう呼び掛けた。ただ、韓国旅行をキャンセルした場合の返金額は灰色と同様、出発日までの期間に応じて計算され、全額返金とはならない。

マスク需要急増、宣徳医材フル稼動

 韓国でのMERS感染発生後、医療用マスクメーカー、宣徳医材科技(Motex、台北市)はここ1週間で受注が2〜3割増え、先月末からフル稼働、残業で生産に当たっている。

 宣徳医材の鄭永柱董事長は、同社のマスク生産量は月1,000万枚で、うち台湾域内向け受注は400万〜500万枚と説明。韓国向け出荷は1四半期当たり50万個だったが、最近需要が急増し、上海工場で対応していると述べた。また、台湾の業者からの問い合わせも相次いでおり、台湾で在庫2,000万枚を維持するため、増産していると明かした。

感染対策用品の販売増

 通販サイトのmomo購物網では、ここ2週間で抗菌剤の販売量が2.5倍に、マスクの販売量はほぼ2倍に増えた。1回でマスク200〜400枚を買った客もいたという。また、PCホーム系列の通販サイトでは、手の消毒用のハンドサニタイザーの販売量がここ1週間で6割増えた他、マスク、抗菌剤、清掃用品の販売が伸びた。

病院は臨戦態勢

 台湾の衛生福利部疾病管制署(疾管署)は2日、ソウルでMERSの市中感染が起きている可能性があるとして、ソウル首都圏(ソウル市、京畿道、仁川広域市)に行く旅行者に対する感染症危険情報レベルを2(警戒)に引き上げた。

 疾管署は同日、台湾に外科用マスク3,157万1,000枚、N95マスク103万2,000枚と十分な備蓄があると発表した。また、台北市立聯合医院など台湾本土6カ所の病院を「緊急対応病院」に指定した。6病院で計121室の陰圧隔離室がある。また、金門、連江、澎湖の離島では計3カ所の病院を「緊急対応病院」に指定した。陰圧隔離室は合計13室だ。

 疾管署はこの他、韓国からの旅行客に対し必要に応じて検疫を行うなど感染対策を進めている。衛福部は、台湾で感染者が確認されれば、直ちに中央流行疫情指揮センターを設置して対応する構えだ。