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原発被災地の日本食品流通、輸入業者を起訴


ニュース 食品 作成日:2015年6月17日_記事番号:T00057615

原発被災地の日本食品流通、輸入業者を起訴

 福島第一原子力発電所の事故後に輸入が禁止された、東日本5県で生産された加工食品が、産地が偽装されて台湾に輸入・流通していた問題で、新北地方法院検察署(地検)は16日、輸入商社の管理職2人を業務上不実記載、詐欺取財などの罪で起訴した。うち1人は中国語ラベルの産地改ざんを認めたが、問題食品を輸出したのは日本の業者だと供述。もう1人の被告も産地偽装のラベルは日本で貼られていたと述べており、日本側が犯行に関与したかが今後の捜査の焦点となる。17日付中国時報などが報じた。


姜TFDA署長(中)は、日本産食品に対する輸入規制について、「水際検査の実態を見て変更の余地があるかを検討する」と述べた(TFDAリリースより)

 台湾では3月下旬、東日本5県で生産された加工食品283品目が輸入され、8県市の大手百貨店などで販売されていたことが判明。新北地検は問題の加工食品を輸入した11社の事務所や倉庫を家宅捜索し、伝票を押収するなど捜査を進めていた。また、衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)は再発防止策として、5月15日から全ての日本産食品の輸入に都道府県を明記した原産地証明を義務付けるなど規制強化に踏み切った。

 今回起訴されたのは、新北市の盛裕欣業貿易、昌盛食品、三燦貿易、および台北市の柏泓企業で輸入営業部経理を務める卓俊忠被告と、励拓(新北市)業務経理の鄧盛栄被告。

 新北地検によると、卓被告は昨年9月より日本の輸出業者から栃木県産の「武平作 えびせんべい」と千葉県産の「キッコーマン しょうゆ1L」、鄧被告は今年3月より茨城県産の「しまじろう げんきビスケット」と千葉県産の「キッコーマン こいくちしょうゆ1L」の購入を開始した。両被告は台湾への輸入に当たり、これらの食品をインボイス、パッキングリスト、船積み指図書などの通関書類に記載せずに輸入検査を申請。問題の食品が検査でばれないよう、貨物には輸入が禁止されていない他の食品を混載した。さらに、輸入許可を取得するために中国語ラベルには実際の産地を記載しなかった。こうして輸入された問題の食品が各販路に卸された。

 中国時報によると卓被告は、「他の食品に混ぜて問題の食品を輸出してきたのは日本の業者で、倉庫で貨物を開けるまで知らなかった。仕方がないから商品は売るしかなかった」と弁明したが、ラベルの産地を改ざんしたことは認めた。一方、鄧被告も犯行を認めたが、産地を偽装したラベルは日本で貼られていたと供述しているという。

 新北地検は、産地偽装の食品輸入には日本の業者も関与した疑いがあるとして、日本側に捜査への支援を依頼したが、現時点でまだ返事がないため、事件の真相は解明できていないと説明した。

輸入規制は継続=TFDA

 日本産食品に対する輸入規制が強化されてから1カ月以上が経過した。TFDAによると、5月15日から6月16日午前1時までに計4,240ロットの日本産食品が到着し、うち98.8%に当たる4,189ロットは問題なく通関を終えた。残り51ロットは産地証明の不備などで輸入が認められなかった。なお、5月15日以降、産地の不実記載や残留放射能が検出されたケースはなかったという。

 TFDAは、輸入規制強化を経た後、通関は既に正常化したと指摘。5月15日〜6月15日の日本産食品の輸入検査量は前年同期比で減少したが、2年前の同期に比べれば増加したと説明した。また、規制強化後の第1週は輸入検査ロット数・重量ともに減少したが、その後は毎週増加し、現在は規制強化前の水準に戻ったと明かした。

 TFDAは、全ての日本産食品に産地証明を、8都道府県の7項目の食品輸入に放射性物質検査証明を義務付ける規制措置は今後も続け、規制を緩和しないと表明した。7月にも規制が解除されるとの観測が浮上していたが、姜郁美TFDA署長は「改めて検討はするが、規制解除にタイムスケジュールはない」と強調した。