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ソニーとシャープ合弁、台湾パネル業界は警戒


ニュース 電子 作成日:2008年2月27日_記事番号:T00005774

ソニーとシャープ合弁、台湾パネル業界は警戒

 
 ソニーとシャープが第10世代液晶パネル工場を共同で運営することなどで提携を決めたことに対し、台湾パネル業界では、「影響はない」(呉炳昇奇美電子副総経理)など、2010年の第10世代工場の稼働までは影響なしという見方が多数を占めているものの、「長期的には台湾パネルメーカーの受注が減少する恐れがある」(27日付経済日報)という見方も出ており、今後の日台間の受注・供給関係の推移に注目が集まっている。

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 これについて、ディスプレイサーチの謝勤益副総裁は26日、「日系大手同士の提携強化であり、台湾業界に悪影響をもたらすだろう。密接に見ていく必要がある」と警鐘を鳴らした。

 また、27日付工商時報は、「ソニーはパネルの供給源を固めたことで、調達先の海外企業に対する新たな価格交渉の手段を増やした。委託生産に特化した台湾メーカーはさらに激烈な価格交渉に直面することになり、殺傷力は恐らく小さくはない」と、台湾メーカーの利益減少の恐れを指摘した。

 さらに、「日系大手は大型から小型まであらゆるタイプのパネルを生産できる技術力があり、台湾メーカーは巨額の投資で建設したパネル工場が、『第8世代ラインで32インチパネルを製造する』ような、付加価値の極端に低い領域に追いやられないよう気を付けなければならない」として、設備・技術面で台湾メーカーが落後しないかという懸念を伝えた。

 シャープは従来の液晶テレビブランドから液晶パネルの供給メーカーへと転換を進めており、友達光電(AUO)、奇美電子(CMO)にとって直接のライバルとなるが、ソニーとの関係が友達と比べて浅い奇美の方がより影響は大きい(蘇志凱メリルリンチ証券ハイテク産業アナリスト)という見方が出ている。ソニーとの戦略的提携とも言える関係の友達については、「第2のパネル供給メーカー」の役割をしっかり果たしていけば、技術力や生産規模、ブランドの衝突がないことから見て、今後もソニーと良好な関係を保っていける、という評価だ。

短期的にはメリット大
 
 ソニーはテレビ用パネルの約30%を台湾メーカーから調達しているが、液晶テレビのシェア1位を目指して今年は出荷台数を昨年の約1,000万台から2,000万台に倍増する方針で、台湾メーカーからの調達は今後2年間は増加が見込まれる。

 花旗環球証券(シティグループ・グローバル・マーケッツ)は、日系2大手の提携について、「供給の拡大と価格の安定という理想的状況をもたらし、ハイシーズンに対応するため生産ライン転換のチャンスとなる」と台湾メーカーのメリットを好感した。

S-LCDへの依存度軽減

 ソニーとシャープの発表によると、シャープが現在、堺市に建設中で、両社の合弁会社が運営する第10世代工場は、10年3月からの稼働予定だ。しかし、計画を前倒しして今年末にライン設置、09年中ごろには生産を開始するとの観測も出ている。初期はガラス基板ベースで月産3万6,000万枚とし、その後7万2,000万枚まで増やす予定。第10世代ラインで生産されるガラス基板は2,850×3,050ミリメートルと第8世代より面積が60%広く、基板1枚から40インチパネルが15枚分、50インチが8枚分、60インチが6枚切り出すことができ、主力は60インチとなるとみられる。

 この提携により、ソニーはパネルの安定調達に加え、サムスンとの合弁会社S-LCDからの調達依存度を低めてコスト低減を図ることができる。一方、シャープにとっては、新世代工場設立への経済的負担軽減と生産能力の消化に貢献する。