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台湾元高、電子企業の輸出に打撃


ニュース 金融 作成日:2008年2月29日_記事番号:T00005805

台湾元高、電子企業の輸出に打撃

 
 米国の景気減速見通しを背景に、台湾元高が急速に進んでいる。昨年は元高抑制策をとっていた中央銀行が、インフレ解消の手段として利上げの代わりに元高容認に踏み切ったため、大量の投機資金が流入したとみられており、今年に入ってからの上昇率は既に5.7%と、各国通貨の中でも大きな上昇幅となっている。これにより、エレクトロニクス分野など、輸出企業の業績が打撃を受ける懸念が高まってる。29日付工商時報などが報じた。
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 台湾元は29日午前の段階で、1米ドル=30.69元(約104.5円)まで上昇。これにより、年初来の対米ドル上昇率は5.7%に達した。台北市輸出入公会の許勝雄理事長(金仁宝集団董事長)は27日、「元高が過度に進みすぎれば輸出メーカーが影響を受け、輸出を経済成長の原動力としている台湾は危機に瀕する」と警戒感を語った。その上で、「中銀は32.5台湾元(約111.4円)プラスマイナス3%の枠内で元レートを安定させるべきだ」と、適切な介入が行われることが望ましいという考えを示した。

 ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の張忠謀董事長は27日、「既に影響が出ている」と指摘。「下半期には1米ドル=30元になるだろう。プレッシャーは大きい」と語った。張平沼全国商業総会理事長も、自身が董事長を務める燿華電子(ユニテック・プリント・サーキット・ボード)がこの1月、為替差損によって2,000万元の赤字を計上したことを明らかにした。

中小企業への影響深刻

 約2兆2,600億元を海外に投資している生命保険業界は、少なく見積もっても3%、約360億元の為替差損を経常しているもようだ。輸出全体の4.7%を占める紡織業も、雪害によって中国への発注分の3割が流れて来たが、為替変動によってこの分の利益が見込めなくなった。

 為替変動の影響は、日頃リスクヘッジを注意している大企業よりも中小企業に顕著だと林秉彬中小企業協会理事長は指摘する。台湾の1カ月当たりの輸出額は200億~300億米ドル、このうち中小企業が占める割合は約18%であることから、この2カ月の台湾元上昇で輸出企業の為替差損の合計額は少なくとも数億米ドルに上ると試算している。また、謝邦昌淡江大学教授によると、海外貿易の利益は一般的に3~5%で、1米ドル=31.5~32元で輸出契約を結んだメーカーは、利益分がなくなった計算になるという。
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総統選挙の恒例?

 なお、台湾は過去2回の総統選挙の際も元高が起きている。前々回2000年は1月3日の31.395元から3月31日は30.49元へと2.88%上昇。04年は同じ期間で33.978元から33.02元へと2.81%上昇した。

 今後どこまで上昇するかに注目が集まっているが、「既に上昇の最終段階」という予想も聞かれている。ある外資系銀行のベテラントレーダーは、「次の指標は2005年3月の高値である30.67元を突破するどうかがだが、30元が中銀の容認する限界ライン」とみている。

 永豊金融控股研究総処の黄蔭基首席エコノミストは、「総統選挙が一つの分水嶺となり、中銀はエレクトロニクス業界の輸出への配慮から、強力な手段で台湾元の上昇を抑えるはずだ」と予想している。