ニュース 社会 作成日:2015年7月17日_記事番号:T00058170
優れた大衆文学作品に贈られる直木三十五賞(直木賞)の選考会が16日に東京で開かれ、台湾出身の東山彰良(46、本名・王震緒)さんの作品『流(りゅう)』の受賞が決まった。台湾人作家の同賞受賞は邱永漢さん(『香港』、1955年)、陳舜臣さん(『青玉獅子香炉』、68年)に次いで3人目の快挙だ。
東山さんは受賞会見で「台湾は僕の国なんですけど、この本がもし中国語に翻訳され、台湾の読者にも届くことがあれば、これに勝る喜びはないと思っています」と話した(16日=中央社)
東山さんは1968年に台北で生まれた後、5歳で福岡県へ移住。大学卒業後は大学院で中国経済史を学ぶため中国へ渡った。彼はこれまでの人生を振り返り、「台湾では日本人、日本では中国人と見られ、中国では『台湾同胞』と呼ばれた」と語り、どこへ行っても自分が外国人だと感じてきたと語る。
東山さんは研究者としてスランプに陥った32歳のとき、突如小説を書こうと思い立ち、処女作となる推理小説『逃亡作法』を書き上げた。そして同作品が宝島社などが主催する「このミステリーがすごい!」大賞で銀賞と読者賞を同時受賞。その後は福岡の大学で中国語を教えながら執筆を続けた。
ちなみにペンネームの「東山彰良」は父方の出身地である中国・山東省と母親の故郷、台湾の彰化県から字を選んだそうだ。その後、彼はミステリー、SFなど多様な作品を世に送り出し、09年には『路傍』で第11回大藪春彦賞を受賞し、着実に作家としてのキャリアと評価を確立していった。
そして今回、直木賞を受賞した『流』で初めて自分の家族の物語をベースとした小説に取り組んだ。同作品について東山さんは、10年以上前、父親の王孝廉さんから祖父の話を聞いた際にその物語を小説にしたいと考えたが、筆力が足りなかったため長らく手を付けることができず、昨年になってようやく書き始めたと語る。
同作品は1975年以降の台湾が舞台で、中国から国民党政府と共に移住してきた祖父が殺されているのを17歳の孫が発見した事件を背景として一族の物語が描かれるが、実際に東山さんの祖父はかつて抗日戦争に加わった山東省出身の兵士で、国共内戦後に台湾に渡っている。『流』を執筆するに当たって東山さんは、父親から祖父との暮らしや台湾に渡ってきた当初のエピソードに関する聞き取りを行ったそうだ。
なお東山さんは「家族についての作品をさらに期待されるかもしれないが、それは自分の可能性を狭めることになると感じる」と語り、既に次回作としてSF小説を書き上げたことを明らかにした。
どのようなテーマであれ、東山さんにしか書けない、これまでにない小説を生み出してほしいものだ。
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