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国民党の総統選候補に洪秀柱氏、初の女性対決


ニュース 政治 作成日:2015年7月20日_記事番号:T00058221

国民党の総統選候補に洪秀柱氏、初の女性対決

 与党国民党は19日開いた全国代表大会(党大会)で、来年1月の総統選挙の公認候補に党副主席の洪秀柱氏(67、立法院副院長)を選出した。野党民進党は既に蔡英文主席(58)を候補に決定しており、2大政党がいずれも女性候補を立てたことで、台湾初の女性総統の誕生が濃厚となった。その場合は、中華圏全体としても初の女性指導者となる。


指名演説で全党の団結を呼び掛ける洪氏。敗北必至と予想する台湾メディアは多い(19日=中央社)

 予備選挙の世論調査を高支持率で突破して指名が現実的になった後、洪氏では総統選に勝てないとの異論が党内で続出したため、国民党は先週、立法委員を含む5人を除名した。強硬姿勢によって反対意見は抑えられ、洪氏の指名は拍手ですんなり決まった。

 洪氏は指名演説で対中政策について、「1992年の共通認識(92共識)を基礎に平和的環境を創造し、全国民が平和による利益を享受するようにしたい」と述べた。批判を呼んだ当初の主張「一中同表(中国と台湾が中国全体の一部であることを相互に表明する)」には一切触れなかった。なお、国民党は大会で、「92共識、一中各表(一つの中国の原則を堅持しつつ、中台が異なる解釈を取る)」を党の政策綱領に盛り込むことを決めた。

 洪氏はまた、「うそやポピュリズムで国を治め、決して反省や謝罪をしない政党には決して台湾を任せられない。台湾を鎖国と無秩序の災難には再び遭わせられない」と民進党を強く批判し、政権維持を目指す考えを強調した。

本土派は依然警戒

 洪氏は国民党にとってベストの人選ではないが、党内主力級の政治家が出馬を見送った結果、総統候補に決まった。予備選の一時の熱気が覚めた最近の世論調査では蔡氏に支持率で大幅にリードされており、今後巻き返せるかが課題となる。 

 そのためには、統一派寄りのイメージを嫌う本土派に対し、自身の対中政策が党方針と同一であることを訴えて支持を取り付ける必要がある。20日付蘋果日報によると、洪氏は今週より中南部への訪問を重ねたい考えとされる。ただ、ある中南部の同党立法委員は「選挙戦の訴えを全て洪氏と絡めてやるかは分からない。リスクが大き過ぎ、やはり適切な距離を置きたい」と語り、票が逃げることへの警戒感を示した。

王金平氏への対応に注目

 国民党は中南部の選挙情勢を盛り上げるため、本土派の代表的政治家である王金平副主席(立法院長)を不分区(比例代表)の名簿順位1位にすることを計画しているとの観測が出ている。王氏は比例の2期目で、党規定では3期目は立候補できないため、規定改正も視野に入れているという。ちなみに王氏は洪氏による選挙対策委員会の責任者への就任要請を拒否しており、党大会でも党内の大物では唯一、壇上に上がらず会場前列から洪氏の指名を見守った。王氏への党の対応とその動きは洪氏の選挙情勢に影響を与えそうだ。

宋氏の動きも焦点

 宋楚瑜親民党主席の動向も焦点だ。民進党系の台湾智庫(台湾シンクタンク)が19日発表した総統選支持率調査では、宋氏は21.7%で、洪氏の21.6%を上回った。親民党は最近、洪氏の人選に不満な国民党本土派への接触が伝えられている。そして、宋氏が実際に立候補した場合、前回12年の約37万票以上の票を獲得する可能性がある。国民党本土派票の掘り起こし以外に、自身は統一派ではないと再三強調した洪氏に不満を抱いた統一派の票も、宋氏に流れるケースが考えられるためだ。

 いずれの問題も、洪氏が陣営の幅広い層から支持を受けるタイプの候補ではないことから起きるものだ。最良の人選を行わなかった国民党は、その代償を支払う可能性が高いといえる。

【図】