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メディアテックが3Gチップ1割値下げ、シェア防衛で


ニュース 電子 作成日:2015年8月20日_記事番号:T00058839

メディアテックが3Gチップ1割値下げ、シェア防衛で

 IC設計最大手の聯発科技(メディアテック)はここ3週間、第3世代移動通信(3G)対応スマートフォン用チップの価格を引き下げ続けており、累計の値下げ幅は約10%と市場の従来予測3%を上回ったもようだ。製品の端境期で旧製品の値下げ余地が大きいことなどが理由とされるが、中国スマホ市場の需要が予想を下回り、新興国でも中国の展訊通信(スプレッドトラム・コミュニケーションズ)が急速にシェアを伸ばす中、主力の3Gチップ市場の地盤を守りたい思惑があるとみられる。20日付経済日報などが報じた。


メディアテックの株価は年初来で約40%下落しており、値下げ戦略が奏功するかが株価回復の焦点となりそうだ(19日=中央社)

 サプライチェーン関係者によると、メディアテックはデュアルコア(2コア)の「MT6572」とクアッドコア(4コア)の「MT6582」の価格をほぼ毎週引き下げており、「MT6572」の最低価格は約4米ドル、「MT6582」は7米ドル以下まで下がった。第2四半期からの下落率は2割に達した。

 値下げの理由について同関係者は、「MT6572」は在庫処理、「MT6582」は次世代の「MT6580」(4コア)が3G市場で販売済みのため、値下げ余地が比較的大きいと分析した。

 スプレッドトラムが低価格攻勢でメディアテックのシェアを侵食していることも、値下げの要因となったようだ。スプレッドトラムが今年発売した4コアの3Gチップ「SC3371」はメディアテックの「MT6572」をターゲットに据え、6米ドルという低価格を打ち出した。これを受けてメディアテックは7月末、今年のスマホチップの出荷目標を従来の4億5,000万セットから4億セットに下方修正。最近は値下げでスプレッドトラムに対抗しているとされる。

新興国の4G需要視野に

 多くの先進国では既に4G時代を迎えているが、新興国では依然3Gが主流だ。メディアテックの今年のスマホチップ出荷目標4億セットのうち、3Gチップは2億5,000万セットと全体の62.5%、4Gチップは1億5,000万セットで37.5%を占める。来年はインド、インドネシア、ブラジルなど新興国で本格的な4G時代を迎える見通しで、メディアテックには4Gスマホへの買い替え需要を見越し、値下げしてでも3Gチップ市場の地盤を固めておきたい狙いがある。

「値下げはやむなし」

 メディアテックは7月末の業績説明会で、同社の在庫回転日数は111日へと昨年同期の60日、今年第2四半期の92日から拡大したと明かしていた。今回の値下げ観測に対し、市場は今年のスマホ需要の不振は間違いないと受け止めている。証券会社は、今年のスマホ市場規模の成長は限られ、チップメーカーは他社からシェアを奪って初めてマイナス成長を避けられると指摘した。このためメディアテックが3Gチップ市場で値下げによりスプレッドトラムからのシェア奪回を図るのは、やむを得ない措置との見方を示した。

 メディアテックは第3四半期の連結売上高を前期比10〜18%増の517億〜555億台湾元(約2,000億〜2,100億円)を目標としている。証券会社は、製品の値下げで売上高は減少するが、現状を見る限り同社は目標は達成できると予想した。