ニュース 電子 作成日:2015年8月24日_記事番号:T00058892
半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)世界最大手、日月光半導体製造(ASE)は21日、台湾業界2位、世界3位の矽品精密工業(SPIL)の株式最大25%を、株式公開買い付け(TOB)を通じて取得すると発表した。両社の提携を通じた競争力強化が狙いで、経営には介入しないと強調した。買い付け条件はSPIL株式の過半を保有する外資にとって魅力的なため、ASEがTOBを成功させ、SPILの最大株主になる可能性は高いとみられる。提携が実現すれば、世界シェア約3割を握る強力な連合体が誕生することになる。24日付経済日報などが報じた。
SPILの封止工程。同社は幹部や弁護士らを集めて対策を協議中で、ASEの本当の狙いを理解した上で、遅くとも今月31日に何らかの回答を発表するとみられる(同社リリースより)
ASEは1株45台湾元(約170円)でSPILの発行済み株式と米国預託証券(ADR)を24日から9月22日までに取得する。予定取得数は最低1億5,580万株、最高7億7,900万株で、それぞれSPILの発行済み株式の5、25%に相当する。最高7億7,900万株の場合、取得額は最高352億元と世界の封止・検査業界で過去最大規模となる。
SPILの株式は外資が58%保有しており、同社経営陣の持ち株比率は10%余りにすぎない。ASEの取得価格はプレミアム(上乗せ)が34.3%に達するため、世界的な株安の中、外資にとって大きな売却誘引となる。
ASEの2014年売上高は51億7,000万米ドルで、世界シェア19.1%で首位、SPILは27億4,100万米ドルで世界シェア10.1%の3位だった。ASEとSPILが連合体を形成すれば、両社は価格交渉力を強化でき、受注を固めやすくなる外、お互いに値下げによる受注競争をする必要がなくなる。ASEには業界最大手の地位を固められるメリットもある。
提携の必要性強調
ASEの董宏思財務長は、TOBによるSPIL株式の取得比率は50%未満で、同社の経営には介入しないと強調した。TOB実施を決めた背景として、台湾の不景気や世界半導体産業における新興勢力の台頭、競争激化、業界再編の活発化などを挙げ、台湾の半導体封止・検査業界は単独で奮闘するのでなく、提携で経営資源を統合し、競争力を強化すべきだと訴えた。また、ASEは法律の範囲内で両社の従業員、株主の権益に十分配慮し、SPILの経営陣と提携に向けた詳細について話し合う意欲があると表明した。
SPILが提携を拒んだ場合の対応について董財務長は明らかにしなかったが、SPILの業績は悪くなく、純粋な財務投資となってもASEには利益が見込めると説明した。
SPILが中国以上の脅威
市場では、ASEがSPILにTOBを仕掛けた理由は、SPILが勢力を伸ばし、ASEにとって中国の「紅色供給網(レッドサプライチェーン)」以上の脅威になっているためとの見方が浮上した。
ASEは先進のシステム・イン・パッケージ(SiP)技術などを武器にアップルのスマートフォン向け受注などを独占してきたが、最近アップルはSPILに受注を打診し、今年第4四半期からSPILもアップル向けに指紋認証チップのSiPなどを提供するとみられる。これに焦りを感じたASEが、TOBでSPILを提携交渉のテーブルに着かせる狙いがあったとされる。
SPIL、経営権保持に訴訟も
ASEのTOB発表を受け、SPILは「事前に知らなかった」と声明を発表した。その上で、TOB説明書を受領後、7日以内に正式な回答を行い、株主に説明と提案をすると表明した。
観測によると、SPILはASEの交渉チーム訪問を待ち、交渉でASEとの提携にメリットがあると判断した場合、林文伯(バウ・リン)董事長自ら外部発表するとみられる。一方、交渉が決裂すれば、SPILは経営権保持のため司法に訴えることも辞さないもようだ。
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