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玉山の山小屋に電線敷設計画、「文明持ち込むな」と反対も


ニュース 社会 作成日:2015年8月27日_記事番号:T00058946

玉山の山小屋に電線敷設計画、「文明持ち込むな」と反対も

 台湾最高峰、玉山(標高3,952メートル)の山頂を目指す登山客の拠点として知られる山小屋「排雲山荘」では、これまで太陽光発電やディーゼル式の発電機に電力を頼ってきたが、登山客の増加により電力不足に悩まされており、下界から電線を敷設する計画が持ち上がっている。しかしこれに対し、登山家や生態学者から「山に文明を持ち込む必要があるのか」「生態環境が破壊される」などと反対の声も上がっている。

 玉山登頂を目指す登山客は一般的に、排雲山荘で1泊して翌朝2時に出発して、山頂へ向かうスケジュールを組む。

 しかし2011年に2万238人だった登山者数が14年には4万1,216人へと2倍以上に増加する中、排雲山荘では電力不足が深刻化し、通信や食事用ばかりか、基本的な医療用の需要も満たせない状況で、高山病患者の治療に必要な酸素吸入用の設備も起動できないことがあるという。

 こうした状況を受けて玉山国家公園管理処は、▽登山口のある塔塔加(タタカ)、またはさらに下の東埔温泉から山荘まで電線を通す▽山荘付近を流れる渓流を利用した水力発電で電力を賄う▽風力発電を導入する――の3案を検討している。管理処は今後、各界から広く意見を聴取し、早ければ17年に着工したい考えだ。

 しかし同計画に対しある登山家は「登山は自然環境に身を置き、都市とは異なる経験を味わうものだ」と指摘。現在山荘では日が暮れれば野生動物の声を聞きつつ就寝し、早朝に山頂を目指すという過ごし方をしているが、十分な電力が確保されれば夜中まで酒を飲むような者が出てきたり、照明が増えることで野生動物の生息にも影響が出るのではないかと語っている。

 ただ一方で、日本の立山黒部、ニュージーランドのミルフォード・トラック、マレーシアのキナバル山など海外の山小屋では電線が引かれており、厳格に管理すれば環境破壊にはつながらないとの認識を示す登山家もいる。

 いずれにせよ、登山者の安全と生態環境の保護を両立させる妥協点を見いだしてほしいものだ。