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死刑判決8回受けた男性、20年かけて無罪勝ち取る


ニュース 社会 作成日:2015年9月2日_記事番号:T00059050

死刑判決8回受けた男性、20年かけて無罪勝ち取る

 20年前に発生した誘拐・殺人事件に関わったとして起訴され、これまで8回にわたり死刑判決を受けた男性が1日、10回目となる裁判でついに無罪判決を勝ち取った。男性は当初から一貫して犯行を否認し、上訴を続けていた。


徐氏(前左2)の裁判は検察総長による5回の非常上告、死刑囚に対する初の違憲審査申し立て認可など、台湾司法史における多くの記録を作った(1日=中央社)

 検察によると、今回無罪判決を受けた徐自強氏(46)は1995年9月1日、いとこの黄春棋(死刑判決を受けて服役中)、友人の陳憶隆(同)と共謀して建設業者、黄春樹さんを誘拐して新北市汐止区の山中に監禁し、家族への連絡方法を聞き出した後に殺害。身代金を得ようと被害者の家族に脅迫電話をかけた際、警察の逆探知により黄春棋と陳憶隆が逮捕された。

 そして犯人2人が警察の取り調べに対し、共犯者として徐氏の名前を挙げたことから、同氏も逮捕された。徐氏は無罪を主張したが起訴された。一審と5回の上訴審(差し戻し審4回)で全て死刑判決を受けた後、00年4月に最高裁でも判決は覆らず、死刑が確定した。

 しかし無罪を訴え続ける徐氏に対し、民間司法改革基金会(司改会)が支援に乗り出し、さらに弁護団は同裁判に対する違憲審査を申し立てた。その結果04年7月、憲法解釈を行う大法官は「共犯者の自白のみを有罪の唯一の根拠としてはならない」との判断を下した他、当時の検察総長が5回にわたり、徐氏の判決について非常上告を行った結果、原判決が破棄され、再び高等裁判所に差し戻された。

 ただ、その後行われた8回目の裁判でも再度死刑判決を受けた。9〜10回目の裁判(差し戻し審)では徐氏が被害者の殺害現場にいなかったとの主張が認められ、殺人罪は取り下げられたものの、依然、誘拐罪で無期懲役の判決を受けた。

 そして11回目となる今回の裁判でついに、犯人の供述は信用できず、検察は徐氏が犯行に加わったことを証明する具体的な証拠を提示できていないとして、高等裁判所は無罪判決を言い渡した。

 徐氏は逮捕から16年にわたり勾留された後、新たに制定された「刑が確定していない被告を8年以上勾留してはならない」との規定に基づき12年に釈放されていた。法廷で今回の判決を聞き、声を震わせながら「やっとこの日が来た。20年の夢から覚めたようだ」と語った。

 法律上、検察は上訴することが可能だが、司改会は上訴しないよう呼び掛けている。検察は「慎重に検討する」との立場だ。

 なお、無罪が確定した場合、徐氏は約16年に及ぶ計5,804日の拘留について、台湾政府に2,902万台湾元の賠償を請求できると弁護士は指摘している。