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鴻海董事長がSPIL提携に期待感、「垂直統合で相互補完」


ニュース 電子 作成日:2015年9月2日_記事番号:T00059076

鴻海董事長がSPIL提携に期待感、「垂直統合で相互補完」

 鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は1日、半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)大手、矽品精密工業(SPIL)との資本提携案について、長期的な垂直統合によって相互補完関係が築けると期待感を示した。一方、SPILに株式公開買い付け(TOB)を仕掛けた封止・検査最大手、日月光半導体製造(ASE)の呉田玉営運長は、中国の「紅色供給網(レッドサプライチェーン)」台頭など市場環境が大きく変化する中、業界再編の必要性を訴えた。ドイツ証券など外資系証券会社は、永続的発展のために業界再編は不可欠で、SPILは鴻海と資本提携すべきでないとの見方だ。2日付蘋果日報などが報じた。


呉ASE営運長は、鴻海は尊敬できる企業だが、台湾各界は今後10〜20年先まで見据えて考えるべきだと訴えた(1日=中央社)

 ASEは先月21日、24日〜9月22日を期限とする株式5〜25%の取得を目指すTOBを発表。SPILは対抗策として28日、鴻海との株式持ち合いによる資本提携案を発表した。鴻海は21.24%を出資し、筆頭株主になる見通しだ。効力発生日は12月1日の予定。

1+1=5以上

 郭董事長は、携帯電話やタブレット端末の薄型軽量化が進み、半導体や部品の小型化、モジュール化が必須となる中、鴻海にSPILとの提携チャンスがやってきたと語った。SPILは優良企業で、林文伯(バウ・リン)董事長とは30年以上の付き合いがあり、経営理念、管理に独自性があると評価した。

 郭董事長は、同業同士の合併は規模が拡大するだけで重複があり、例えば市場シェアが2割から3割に上昇するだけだと指摘。一方、鴻海とSPILとの資本提携は1プラス1が5以上の効果を生み出すと述べた。鴻海子会社の封止の訊芯科技は規模が小さく、これまでもSPILとの提携を考えており、決して短期的な出資や投資目的ではないと強調した。

ASE、友好的買収を強調

 林SPIL董事長は31日、ASEからTOBについて事前に知らされなかった「悪意ある攻撃」である上、両社は業務や顧客に重複が多く、合併効果は1プラス1イコール2未満だと強い嫌悪感を示していた。

 これに対しASEの呉田玉営運長は、TOBは証券交易法第13条で事前通知が禁じられており、事前に伝えられず申し訳なかったと話した。両社を合わせた封止・検査の市場シェアは30%で、トラスト(企業合同)にも当たらないと説明した。あくまで友好的買収であり、業務や経営には介入しないと強調した。まずはSPIL株25%の取得を目指し、顧客、取引先、政府、投資家の意見を聞きつつ台湾産業発展にとってプラスとなる統合について考えるのは次の段階だと述べた。

SiP利益を奪われる?

 ドイツ証券の周立中半導体アナリストは、SPILが鴻海との資本提携を結べば、ASEにとって2016〜17年にSPILを買収する難易度が高まるが、もはやM&A(合併・買収)しか中国政府の支援を受けた中国の競合メーカーに立ち向かうすべはないと指摘した。また、SPILは鴻海と資本提携をしなくてもシステム・イン・パッケージ(SiP)モジュール分野での協力は可能で、資本提携に踏み切れば鴻海に利益が流れてしまうと警告した。