ニュース 電子 作成日:2015年9月15日_記事番号:T00059315
15日付工商時報によると、EMS(電子機器受託生産サービス)世界最大手、鴻海精密工業が中国貴州省で第6世代LTPS(低温ポリシリコン)液晶パネル工場を建設する計画との市場観測が浮上している。投資額250億人民元(約4,700億円)のうち、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が50億元を出資し、貴州省政府も出資するとみられている。ハイエンドのスマートフォン用パネル需要を見込み、鴻海はLTPSパネルの生産能力拡大を加速するようだ。
投資計画は鴻海が主導し、鴻海傘下のパネル大手、群創光電(イノラックス)が人員を提供するとみられているが、両社はコメントを避けた。
市場観測によると、第1段階の月産能力が2万5,000〜3万枚(ガラス基板投入枚数)で、資金調達が順調ならば2018年末〜19年初めに稼働する計画だ。鴻海の単独出資でなく、ファーウェイから出資を受け入れることで、LTPSパネルの一定の受注を確保できる見通しだ。
鴻海は今年上半期にも、イノラックスの高雄市の路竹工場に第6世代LTPSパネル生産ラインを設置すると発表している。生産能力は2万3,000〜2万4,000枚。8月に設備を搬入しており、来年第1四半期に稼働する予定だ。イノラックスにとってはハイエンドのスマホ用パネル市場を開拓、鴻海にとっては垂直統合を強化してパネルからスマホ組み立てまで一貫サービスを実現する狙いがある。
なお、郭台銘(テリー・ゴウ)鴻海董事長のインド視察にイノラックスの王志超総経理がたびたび同行していることから、イノラックスはインドで第8.6世代工場の他、第6世代LTPSパネル工場、液晶パネルモジュール(LCM)工場建設も検討しているとみられている。
スマホ・タブレットと応用拡大
LTPSパネル工場はパネル各社が投資を計画している。2016年には、▽友達光電(AUO)、昆山6世代工場▽信利光電(TRULY)、恵州4.5世代工場▽深圳市華星光電技術(CSOT)、武漢6世代工場──、17年には▽京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)、成都6世代工場▽天馬微電子、上海5.5世代工場──の稼働が予定されている。
LTPSパネルは、アップルが初代iPhoneから採用し、ハイエンドスマホの代名詞となった。かつて非常に高価格だったが、日韓パネルメーカーの参入、中台パネルメーカーの生産能力拡大で価格が下落し、アモルファス(非結晶)シリコン(a−Si)のフルハイビジョン(FHD)パネルとの価格差は2米ドル、10%まで縮まった。このため、LTPSパネル普及率は急上昇し、今年はスマホ市場シェア27%、2017年には50%以上が予測されている。
ジャパンディスプレイ(JDI)も今年タブレット端末向けにLTPSパネルを量産するが、価格がまだ高いため出荷量は多くない。ただ、アップルの12.9インチのiPad ProにシャープのIGZO(酸化物半導体、イグゾー)パネルが採用され、サムスン電子がタブレットにAMOLED(アクティブマトリックス式有機EL)パネルを搭載するなど、高解像度ディスプレイの需要が高まる中、LTPSパネルは生産能力増加、技術の成熟に伴い、スマホ、タブレット、タブレットとしても使える2in1ノートパソコンへと応用製品がますます広がる見通しだ。
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