ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

マンションに無断で携帯基地局、健康不安訴える住民が勝訴


ニュース 社会 作成日:2015年9月16日_記事番号:T00059319

マンションに無断で携帯基地局、健康不安訴える住民が勝訴

 通信キャリア間で携帯電話の通信品質向上をめぐり、基地局の設置合戦が過熱する一方で、基地局から出る強い電磁波が健康に悪影響を及ぼすとの懸念から、自宅付近での設置に反対する市民も多い。こうした中、最大手キャリアの中華電信がマンションの1室を借り受け、無断で基地局を設置していたことに対し住民が提訴。このほど住民側の訴えを認める判決が下され、議論となっている。

 国家通信伝播委員会(NCC)によると、「電信法」関連規定では通信業者が一般の住宅やビルに基地局を設置する場合、建物の管理委員会または全住民の同意を得る他、設置完了後にNCCに使用許可を申請する必要がある。

 しかし中華電信は2008年に高雄市内にあるマンション10階の1室を借り受け、住民の同意もNCCの許可も得ずに基地局を設置した。この部屋は中がのぞき込めないようカーテンが閉められていたが、不審に思ったマンションの住民が11年に発見。NCCに通報後、中華電信は直ちに設備を撤去、38万台湾元の罰金処分を受けた。

 さらにその翌年、マンションの住民9人は中華電信と同社に部屋を貸し出した家主を相手取り、「秘密裏に基地局を設置して住民の健康権を侵害した」として、63万元の損害賠償を求めて訴えた。

 この訴訟では電磁波による健康被害は立証できないとして住民側が敗訴したものの、その後13年に訴えの内容を「居住の平穏を脅かした」に改めて再び提訴。一審ではまたも敗訴となったが、控訴審では「基地局の無断設置で住民に許容範囲を超える不安とストレスを与えた」と認め、中華電信に対し、原告9人にそれぞれ2万5,000元の慰謝料を支払うよう命じた。

 同裁判に対して通信業界からは「市民は通信品質に対し高い要求を出すのに、基地局は設置したがらない」と不満の声が上がり、ネットユーザーの中にも「電磁波が怖いなら携帯電話を使わなければいい」と住民に批判的な意見も見られたが、逆に「不安やストレスの解消に2万5,000元は安過ぎる」との声もあった。

 なお業界関係者によると、台湾の基地局の70〜80%は住宅内に設置されている他、通信業界では市民からの抗議を避けるため住宅内の他、植木で囲んで見えなくする、給水タンクや、テレビアンテナ、エアコンの室外機などに偽装するなどして近隣住民に知られないように基地局を設置する手法が一般化しているという。

 こうした状況に対しNCCは「事前に審査を経た基地局であれば安全性に問題はなく、過度に不安になる必要はない」と強調している。