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鴻海とSPIL、SiP垂直統合の効果強調


ニュース 電子 作成日:2015年9月17日_記事番号:T00059370

鴻海とSPIL、SiP垂直統合の効果強調

 EMS(電子機器受託生産サービス)世界最大手、鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は16日、半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)大手、矽品精密工業(SPIL)と、ウエアラブル(装着型)端末やIoT(モノのインターネット)商機を狙い、指紋認証モジュールなどのシステム・イン・パッケージ(SiP)で提携する中長期計画を発表した。封止・検査最大手、日月光半導体製造(ASE)が仕掛けたSPILの株式公開買付(TOB)への対抗策だ。ただ消息筋によると、外資は大部分がASEによる買収を支持しているという。17日付経済日報などが報じた。


蘋果日報によると、林董事長(右)は発言に普段の力強さがなく、何度も郭董事長(左)の顔色をうかがい、まるで脇役だったという(16日=中央社)

 鴻海とSPILは15日それぞれの董事会で、サプライチェーンを垂直統合する戦略提携と業務提携を進めるため、鴻海の株式1株に対しSPILの株式2.34株を割当交付することを決議し、両社の董事長が16日、初めてそろって共同説明会を開催した。

 両社は、指紋認証モジュール、カメラモジュール、MEMSジャイロセンサーなど5分野のSiPで提携する計画だ。SPILの林文伯(バウ・リン)董事長によると、鴻海傘下の▽虹晶科技(ソクレ・テクノロジー)、シリコンIP(知的財産)▽天鈺科技(フィティパワー・インテグレーテッド・テクノロジー)、ドライバIC設計▽臻鼎科技控股(ZDT)、フレキシブル基板▽京鼎精密科技(フォックスセミコン)、半導体設備▽訊芯科技控股、封止・検査──と協力し、来年、指紋認証センサーから着手する。中期的には鴻海の自動化、精密モジュールを利用して生産効率を向上させ、長期的には新興国・地域のスマートフォン市場でのシェア向上を図る。IoT向けシステム統合ソリューションでも協力する。両社は、2017年からSiP売上高と利益に提携効果が表れ、18年から市場シェアが急上昇すると試算している。

アップル受注で脅し

 郭董事長は、鴻海とSPILの垂直統合効果は必ず「1プラス1イコール5以上」となり、ASEとSPILの水平統合効果を大きく上回ると述べた。さらに郭董事長は、ASEがSPIL買収で経営に介入するなら、顧客はASEへの発注をやめるはずだと脅しを掛けた。

 ASEの統計によると、同社売上高の2割がEMSからで、そのうち鴻海が最大を占める。また、鴻海とASEの共通の大口顧客であるアップルは、サプライヤーが1社に集中するリスクを嫌うため、もしASEがSPILを買収すれば、両社以外に受注が流れる可能性は高い。

 林董事長は、SPILとASEは顧客の85%が重複しており、戦略提携を結べば、必ず中国や韓国企業に受注が流出すると述べた。

 封止・検査業界の世界市場シェアは上位から▽ASE、18.9%▽アムコア・テクノロジー、11.5%▽SPIL、9.3%▽スタッツチップパック、5.8%▽力成科技(パワーテック・テクノロジー)、5%──。

 一方、ASEは同日、30年以上前はIDM(垂直統合型の半導体メーカー)が主流だったが、今や新興勢力への対抗上、水平統合が世界的なトレンドで、同社のSPIL株TOB計画に変更はないと強調した。

外資に響かず

 ASEは8月24日からSPIL株5〜25%取得を目指して1株45台湾元(約170円)でのTOBを開始しており、9月22日が期限だ。SPIL株の16日終値は42.55元。

 欧州系証券会社のアナリストは、投資会社にとっては業界再編の観点からASEによるSPIL買収の方が望ましく、SPILが鴻海と資本提携を結んでも株価が45元を上回る可能性はあるのかと疑問を呈した。

 消息筋は、外資は当初様子見だったが、SPILが鴻海との株式持ち合いを発表したことで、株式の希薄化を嫌気し、ASEへの売却に傾いたと指摘した。

 半導体業界関係者は、水平統合ならSiP技術の研究開発(R&D)加速、経済規模の拡大によるコスト低減が可能だが、垂直統合は絶対に必要なものではないと話した。

 かつて封止・検査業界で副総経理を務めた人物は、SPILが鴻海というホワイトナイト(白馬の騎士)を求めたのは、同業のASEに買収されたくないという単なるメンツの問題と語った。

 今後の展開は、▽ASEがTOBに成功し、SPILの筆頭株主になる▽SPILの10月15日の臨時株主総会で、鴻海との株式交換が承認され、鴻海がSPILの筆頭株主になる▽SPILの臨時株主総会で鴻海との株式交換が否決され、ASEが筆頭株主になる可能性が残される──の3パターンだ。