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総統選前は中国人客消滅か、旅行・小売業界に打撃も


ニュース 商業・サービス 作成日:2015年10月7日_記事番号:T00059690

総統選前は中国人客消滅か、旅行・小売業界に打撃も

 来年1月の総統選挙を前に、旅行業界団体、台北市旅行商業同業公会(TATA)の柯牧洲副理事長は6日、中国政府が各省市の旅遊局に対し、12月16日~来年1月15日まで中国人の訪台者数を最大95%削減するよう通知したと語った。台商(海外で事業展開する台湾系企業)に航空機の座席を融通し、投票のために帰台させる狙いと指摘した。実際に実行されれば、ホテルや百貨店などが打撃を受け、経済損失は最大160億台湾元(約590億円)に上る見通しだ。7日付経済日報などが報じた。

 行政院大陸委員会(陸委会)は、交通部観光局が中台間の観光交流の窓口機関、台湾海峡両岸観光旅遊協会(台旅会)と中国の海峡両岸旅遊交流協会(海旅会)を通じて確認中で、同時に中国側に対し、台湾の選挙を理由に中国人訪台旅行者の権益を奪わないよう呼び掛けると説明した。中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)はこの件についてコメントしていない。

 中台観光を管轄する頼炳栄・観光局業務組長は、中国人の訪台95%削減は特定の省や旅行会社の個別事案と考えられ、実際の影響はそこまで大きくないとの見方を示した。観光局の関係者は、中国人の訪台意欲は旺盛で、台湾地区出入境許可証(入台証)申請は11月まで埋まっていると話した。

 一方、ある旅行会社は、これまでも総統選挙期間中は中国側が訪台を制限しており、11月ごろから投開票まで中国人が3~5割減少するが、主な対象は中国の政府機関の交流団だと指摘した。なお、中国人がもたらす商機は、1カ月当たり延べ34万人が訪台、平均7日間滞在し、1日当たり214米ドルを消費するとすれば、1カ月当たり168億元に上る計算だ。

民進党をけん制

 ある企業関係者は、これまでも選挙期間中に同様の動きはあったが、民進党をけん制するため今回は特に力を入れていると指摘した。ある台商の幹部は、中国側が台商に無料航空券を配布して投票を促していると聞いたことがあると語った。ただ、今回は情勢を見る限り、台商の投票で選挙情勢を変えることは困難と話した。

 来年1月16日の総統選挙は、与党国民党が洪秀柱副主席(立法院副院長)を、民進党が蔡英文主席を、親民党が宋楚瑜主席を公認候補に決定している。国民党は統一色が強過ぎる洪副主席では敗戦が濃厚な上、同日投開票の立法委員選挙に悪影響を及ぼすと判断し、公認候補を朱立倫主席にすげ替える動きを進めていると報じられている。

台北101・リゾートホテルに影響

 中台でホテルを展開する富駅酒店集団(FXホテルズグループ)の侯尊中董事長は、選挙期間中は過熱しがちで、もし中台の市民同士が衝突する事態となれば中台関係に傷がつくとして、中国人の訪台制限政策に理解を示した。ホテルへの影響については、都市部は日本、韓国、香港・マカオからの宿泊者が多く、長期滞在も埋まっているので影響は限定的だが、リゾート地は中国人の宿泊者が多く、影響は顕著だと指摘した。

 台北101は年間売上高の30%を観光客が占め、その半分は中国人だ。うち、ショッピングモールの台北101購物中心(台北101モール)は、クリスマスシーズンは台湾人客が中心なので影響は大きくない。展望台は、入場者数が2008年の延べ100万人から今年290万人まで増える予測で、台湾人が60%・中国人が40%のため影響は大きそうだ。

 百貨店大手、新光三越百貨は、特に台北南西店と台北信義新天地の店舗に影響が予想されるが、中国人来店客の業績は2~3%にすぎないと説明した。

 台北晶華酒店(リージェント台北)地下の国際ブランドのショッピングモール、麗晶精品(リージェント・ギャラリア)は、台湾人95%・中国人5%のため影響は小さいと指摘した。

 航空大手、中華航空(チャイナエアライン)の主管は聞いたことがないとコメント。長栄航空(エバー航空)の主管は、中国の政策は分からないが予約状況を見ながら必要に応じて対応すると語った。

【表】