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SPILへの鴻海出資案否決、ASEに徹底抗戦


ニュース 電子 作成日:2015年10月16日_記事番号:T00059857

SPILへの鴻海出資案否決、ASEに徹底抗戦

 半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)大手、矽品精密工業(SPIL)は15日の臨時株主総会で、同業最大手、日月光半導体製造(ASE)による買収を覆すことを目的とした、鴻海精密工業との資本提携に向けた議案2件が否決された。ASEはこれまで何度も経営には介入しないと強調しているが、SPILは同日、買収無効の確認を求め高雄地方法院に提訴し、徹底的に争う姿勢を明確にした。16日付蘋果日報などが報じた。


林SPIL董事長(右)は臨時株主総会で、従業員から「董事長がんばれ」と励ましの声を受け、涙をぬぐう一幕もあった(15日=中央社)

 SPILの臨時株主総会は株主の90%以上が出席した。鴻海を引受先とする新株発行を目的とした、資本金を360億台湾元から500億元(約1,860億円)に引き上げる会社定款の変更案は▽賛成、46.57%▽反対、32.06%▽無効、0.01%▽棄権、21.37%──、鴻海との株式交換を目的とした、資産取得や処分手続きの変更案は▽賛成、47.19%▽反対、27.49%▽無効、0.02%▽棄権、25.3%──と、いずれの議案も過半数の賛成を得られなかった。約5%の株式を保有する政府系株主は投票を棄権した。

 SPILの林文伯(バウ・リン)董事長は、議決権行使助言会社、米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)のレポートを見て、大部分の外国人株主が反対票を投じたことが敗因と分析した。ISSのレポートでは、SPILと鴻海の株式交換にプレミアム(上乗せ)はなく、株主の権益を損ない、コーポレートガバナンス(企業統治)に不利と指摘されていた。

 また林董事長は、鴻海との戦略提携を続行すると表明した。SPILにとってシステム・イン・パッケージ(SiP)は重要な発展戦略で、3C(コンピューター、通信、家電)に強い鴻海は大きな支えになると説明し、別の出資方法を探ると述べた。メディア各紙は、出資の他、両社合弁の新会社設立などの可能性を指摘した。一方、市場では、鴻海傘下の半導体封止検査会社、訊芯科技控股などと提携してアップルからの受注を狙う計画が頓挫するとの懸念も出ている。


臨時株主総会の会場の外には、ASEによる買収に反対するSPIL従業員500人以上が集結した(15日=中央社)

 鴻海とASEは、SPIL臨時株主総会の決議を尊重するとコメントした。各社の同日株価は、▽SPIL、42.4元(前日比1.65元=4.05%上昇)▽ASE、37.55元(2.55元=7.29%上昇)▽鴻海、86.7元(0.6元=0.7%上昇)──といずれも上昇した。

ASE議決権なしに疑問の声

 林董事長は、ASEは8月24日~9月22日の株式公開買付(TOB)の公開買付説明書に純粋な投資と記載していたが、競合の立場から鴻海との戦略提携計画に口を出してきたことより、経営に関与する意図は明確だと指摘した。公開買付説明書の虚偽記載、記載隠匿は証券交易法、公平交易法違反で無効だと提訴の理由を説明した。

 ASEは同日、訴状が届いてからコメントすると表明した。現在のSPIL株主構成は▽外資、54.17%▽ASE、25%▽SPIL関連、18%▽その他、2.83%──。

 会社法第165条には、臨時株主総会の開催30日前から株主名簿の記載を変更できないと規定されている。しかし市場では、ASEが今回の臨時株主総会で議決権を行使できないことに疑問の声が上がっていた。金融監督管理委員会(金管会)の曽銘宗主任委員は同日、過去20~30年は問題がなかったが、各界から意見を聴取し、TOBや敵対的買収に関する現行の制度と法規を見直すと述べた。