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「台湾MRTのモデルになりたい」、施媺嬍・高雄市捷運局副総工程司インタビュー


ニュース 運輸 作成日:2008年3月10日_記事番号:T00005999

「台湾MRTのモデルになりたい」、施媺嬍・高雄市捷運局副総工程司インタビュー

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(施媺嬍・高雄市捷運工程局副総工程司)
 
 MRTは高雄にいかなる変化と発展をもたらすのだろうか。ワイズニュースは1995年の高雄市捷運工程局の発足当時よりMRTの実現に力を尽くしてきた、施媺嬍同局副総工程司に、期待される経済効果などについて話を聞いた。
 
──開通おめでとうございます。MRTの開通で、どのような経済効果が期待できますか?

施副総:2001年10月の着工から6年4カ月で、中央・高雄県市政府と高雄捷運公司が行った投資は1,814億台湾元(約6,050億円)に上ります。年間約300億元で、これだけの多額の公共投資であったことが、まず一つの経済効果といえます。

 MRTの最大の意義はもちろん移動が便利になることで、捷運工程局が台湾経済研究院に委託して行った経済効果の試算では、移動時間の短縮による効果が年間293億6,000万元、移動コストの低減効果が106億元に上ります。

 沿線で新市街の開発が進むことにより新たに人口が30万人増え、土地の価値上昇などによる経済効果は186億4,400万元。自動車やバイクの利用が減ることで、大気汚染や騒音の減少よる環境面の経済効果は3,500万元に上ります。

──路線にはどのような特徴がありますか。

施副総:高雄MRTの路線は、地域の交通量調査に基づいて、交通量が多い地点を結びました。最大の特色の一つは、「陸海空」の既存の各交通インフラを結んだことです。紅線は高雄国際空港、高鉄左営駅、台鉄高雄駅と連絡しており、橘線が開通すれば旗津(高雄港沖の小島で観光地)へもアクセスします。これによって地域の交通が格段に便利になります。

 三多商圏や高雄駅周辺の商圏をはじめ、六合夜市(美麗島)、全大最大のショッピングセンターである統一夢時代購物中心(獅甲)、遊園地の布魯楽谷(凱旋)、中央公園、橋頭製糖工場(橋頭糖廠)など、紅線には観光客が訪れる重要な拠点が多くあります。観光の振興にも重要な役割を果たすと確信しています。
 
──開通は台北MRTより10年以上遅れました。高雄の人口規模から見て、遅かったとは感じませんか?

施副総:それだけの時間があったがゆえに、台北MRTや海外の地下鉄などから非常に多くのことを学ぶことができました。

 2001年秋、台風16号(納莉台風)による洪水で、台北MRT南港線は3カ月の運行停止を余儀なくされました。MRTの出入口はいったん階段を上ってから降りるようになっていますが、我々は災害を参考に、計12カ所の駅で階段の高さを200年に一度の洪水に対応できる水準から、さらに80センチ高くしました。

──高雄MRTにはどのような課題がありますか?

施副総:10月に橘線が開通したとしてもまだ南北、東西の十字線で、利用者の需要を十分に満たせません。この外郭を結ぶ環状線が必要で、我々は既にライトレール(LR)による計画案を行政院に提出していますが、当初計画よりも環状の輪をより大きくした形で、近く認可が下りる見通しです。

 また、橘線の屏東までの延伸も既に行政院の原則同意を得ており、環境保護署の環境評価も通過しました。こうした、必要な路線建設、延伸が行って、完成度の高い交通網にしていかなければなりません。

──長年の労苦の末、開通を迎えたことにどのような気持ちですか。

施副総:きょうはとても感動しています。恐らく多くの人に利用してもらえると思います。台北MRTでさえも、建設当初は今のように多くの人が利用されるとは思われていませんでした。

 美麗島駅の世界最大のステンドグラスによるドームの公共芸術や各駅の特色あるデザインの導入は、工業都市の高雄に芸術の彩りを添えて人々にMRTを大事にする気持ちをもってもらいたいと思ったからです。
 
 台湾のMRTは今後も台北で建設が続くほか、台中や桃園などでも計画されています。快適で美しい高雄MRTが、台湾のMRTのモデルとなれるよう、力を尽くしていきたいと思っています。

(聞き手、ワイズニュース)