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孝行息子の死亡保険金払い拒否、三商美邦人寿に批判噴出


ニュース 社会 作成日:2015年11月4日_記事番号:T00060177

孝行息子の死亡保険金払い拒否、三商美邦人寿に批判噴出

 昨年11月、33歳の内装工の男性が仕事中の事故で死亡した。男性は高齢の両親を介護するため結婚もせず、ほとんど休みなく働く孝行息子で、自分に何かがあった場合に備えて傷害保険と生命保険をかけていた。しかし、男性の死後、保険会社は「死因は事故ではなく病気」と主張して傷害保険金の支払いを拒否。これに対し、インターネット上などで批判が噴出した。


三商美邦人寿が控訴しなかったことについても「批判されなかったら控訴していたのか」などと厳しい声が寄せられた(同社フェイスブックページより)

 死亡した劉志明さんは13年前に兵役に就いた際、友人の勧めもあって服役中の事故に備えて三商美邦人寿保険(マーキュリーズ・ライフ・インシュアランス)の傷害保険と生命保険に加入した。

 劉さんは現在91歳になる父親と母親、3人の姉を持つ6人家族の末っ子だったが、母親が幼いころに3番目の姉を連れて家を出た後、他の姉2人も独立。兵役を終えた後、劉さんは工場労働者として働きながら一人で高齢の父親を世話していた。

 さらに6年前、劉さんは脳卒中で倒れた母親も家に引き取り、面倒を見ることになった。少ない給料で両親の介護をしつつ生活をやりくりするため、たまに友人と釣りや旅行に出掛けるほかはほとんど働きづめで、兵役後にかつての恋人と別れた後は、女性と交際することもなかった。

 そして一昨年、容体が悪化した母親を介護施設に入れたため、毎月2万6,000台湾元の費用が必要になったが、認知症の症状が出始めた父親を付きっきりで介護するため劉さんは仕事を辞めてしまった。このため生活はますます厳しくなり、劉さんは一時、保険を解約しようと考えた。しかし「自分に何かあった場合、保険金で親の面倒を見てもらえる」と考えて踏みとどまったそうだ。

 しかし不運なことに昨年、劉さんの懸念が現実のものとなってしまった。内装工として再就職した彼はある日、現場で片手に業務用の扇風機、もう片手に材木を持って階段を上っていたところ、不注意から足を踏み外して転倒。扇風機のモーター部で左胸を強く打ち意識不明となり、病院に運ばれたものの帰らぬ人となってしまった。

 劉さんが亡くなった後、両親にとって保険金が唯一の救いとなるはずだったが、三商美邦人寿は生命保険金120万元は支払ったものの、調査の結果、劉さんは心臓に疾病を抱えており、これが死因となったと主張して、傷害保険金200万元の支払いを拒否した。

 これを受けて劉さんの遺族は三商美邦人寿を提訴。先ごろ勝訴判決を得た。判決を受けて同社は控訴するかどうか、態度を保留していたが、この話題がメディアに取り上げられ、同社に対する批判が噴出したことを受けて態度を一転。3日に控訴はせず、判決に従って保険金を支払うとの声明を発表した。これを知って天国の劉さんも安堵(あんど)していることだろう。